連載・異業種から化粧品分野に新規参入した上場各社の化粧品事業に迫る【11】セーレン、シルクたんぱく質セリシン無限の可能性を秘めた素材に(上)

2015.01.21

特集

編集部

セーレンは、日本有数のシルク織物産地福井で、明治22年に創業した繊維の老舗メーカー。同社が化粧品分野に参入した契機となったのが、社名の由来になっているシルクの光沢を出すために水洗いする「セーレン」(精錬)作業における職人の手の美しさだった。

シルクは、芯になっているフィブロインとそれを覆うセリシンの2つのタンパク質で構成されている。セリシンは、絹になるフィブロインを取り囲むタンパク質。セーレン作業は、絹生糸の表面を覆う「セリシン」という天然たんぱく質を取り除く作業。この作業が手の美しさを保つことを突き止めたことが化粧品分野参入の引き金となった。

セーレン、絹糸の断面絹糸の断面図(写真)をみるとたんぱく質のセリシンが同じたんぱく質のフィブロインで構成。セリシンがシルクの芯になっているフィブロインを取り囲んでいる構造をなす。
同社の研究開発部門では、世界で初めてセリシンを高純度に抽出・精製する独自の特許製法技術を確立、セリシンの実用化に成功した。

同社が開発したセシリン抽出技術による製造法は、セリシン分子の大きさが揃っていること。同時に、不純物を取り除いて純度が高いことが特徴で、平成3年に世界初のセリシンの抽出・精製に成功。続いてセリシンを高純度に精製する製造技術を確立し、平成9年にセリシンの抽出技術に関わる特許を取得した。

「セリシン」と「肌の天然保湿因子」セリシンの機能性研究については、1989年から大学などとの共同研究を進めてきた。その中からセリシンの強い抗酸化作用があることを見出し、細胞の老化を抑制することを解明。また、健康維持に重要な善玉ホルモン「アディポネクチン」についてこれまで、加齢や内臓脂肪の増加に伴い分泌されにくくなると指摘されてきたが、セリシンを摂取することで、アディポネクチンの濃度が増加し、中性脂肪の低下やコレステロールの低下を確認した。さらに、セリシンに含まれるアミノ酸組成は、肌の天然保湿因子と類似しており特に、セリンという保湿性に優れたアミノ酸が多く含まれている(円グラフ)ことが判明。ヒアルロン酸や蒸留水と比較しても肌になじみやすいこと。また、シミの元となるチロシナーゼの働き抑えることで美白効果を示し、さらに紫外線による皮膚の老化(シワ)を抑えることなどを実証試験で確認している。2009年6月には、セリシンによる皮膚の新陳代謝の正常化に関する新たなメカニズムを解明し、優れたエイジングケア素材であることを明らかにした。

1個の繭から0.1グラムしか取れないセリシンをさらに独自の製法で精製するため、使用できるセリシンはわずか0.01グラムと貴重な素材。
まさに同社にとってシルクたんぱく質「セリシン」の誕生は、医薬品、化粧品、食品を生み出す無限の可能性を秘める素材として精彩を放っている。

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セーレン株式会社

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