中小企業が取り組む化粧品の新規事業【4】アート、年内にネットチャネルを構築、新たにUVクリームと美容液も販売へ
2015.02.19
編集部
絹染色業の株式会社アート(群馬県桐生市)は、年内にも新たに化粧品のネットチャネルを立ち上げる。また、UVクリームと美容液の2新商品を市場に投入し、化粧品事業の成長・発展に繋げる。
同社は、県の工業試験場と共同で、製糸工場から大量に発生する繭毛羽(写真右)の有効活用に着目し、繭毛羽から絹タンパク質を抽出してその有効成分の利用研究を開始(2003年)した。2008年には、県繊維工業試験場と共同研究した「加水分解方式」による天然繭の毛羽から絹タンパクを取り出すことに成功。合わせて化粧品製造販売業の許可を取得。2010年には、群大医学部と連携を図って絹たんぱくの保湿性と紫外線吸収能及び抗酸化作用、抗菌性の実証を裏付けてスキンケア商品「アイツー」(写真左)をブランド化。化粧液、クリームなど4品目の商品化を図り、桐生市内の直営店4店舗とNTT高崎支社、群大医学部などを中心に販売を始めた。
4品目の中でも特に、石鹸の販売が好調。現在までの累計販売個数は、4000個にのぼるなどヒット商品になっている。
ここへきて石鹸を中心にリピートが高まっていることからネット網を構築してリピート率の向上に繋げる。同時に、UVクリームや天然の黄色い繭「ぐんま黄金」から抽出した有効成分配合の美容液を新たに商品化して市場に投入することで、収益の向上を図ることにした。
同社では「昨年6月に富岡製糸場が世界遺産に登録されるなど繊維を取り巻く環境が明るくなっている。そうした環境を見据えながら販売チャネルの拡充や新商品を投入することで、化粧品事業の成長・発展に繋げたい」としている。
1982年設立の同社が化粧品事業に乗り出すきっかけとなったのは、絹タンパク質を合成繊維に付着させた女性向けインナー・ウェアを試着して使ってもらったところ、多くのモニターから「こんなに良いものならば原液を直接、肌に塗ってみたい」という声が沸き起こった。
そこで同社は、県繊維工業試験場と共同で、絹タンパクを抽出し、繊維に効果的に付着させる”セリシン・フィブロイン加工”技術を確立。また、国の補助事業を活用して技術の高度化を進めた結果、洗濯を数十回しても絹タンパクが繊維から落ちない技術も確立するなど肌にやさしい下着としての商品化に繋げた。絹タンパクが絹糸に付着する技術を肌に応用し化粧品として商品化したことが結実した。
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