【連載】化粧品各社のイノベーション研究【5】コタ株式会社① ~美容室の経営改善をコンサル、相互にメリットを享受~
2015.12.8
編集部
コタ株式会社(京都府、東証1部)は業務用頭髪化粧品の製造・販売を目的に、オイルショックが起きた1979年9月に小田製薬株式会社として創業したのが始まり。2001年1月に小田製薬株式会社から現社名に変更。2014年3月には東証1部市場へ上場した。
創業以来、経営理念に掲げている「美容業界における美容室の近代化」とは、美容室の経営を近代化するということ。「取引先美容室の発展こそが当社の繁栄にもつながり、双方がメリットを享受できる」との思想・思考に基づく。
その思想の根底には、経営者が一代限りで消滅する美容室の個人的会社経営ではなく、「会社の永続を目的とした経営管理体制づくり」がある。
同社は、この創業精神に立脚した具体的施策として、独自のビジネスモデル「旬報店システム」を構築し、1492店(2015年3月期現在、総売上高の約65%を占める)にのぼる美容室(旬報店=写真)に対するコンサルティング・セールス活動に乗り出している点にビジネスの大きな特徴が見られる。
同社が経営支援を行う美容室に対して最初に経営改善システムとして開発(1980年)したのが「週報店システム」である。
同システムは、財務状況に加えて美容室の売上を図るうえで重要な客数、客単価向上など確認すべき項目(総客数、パーマ客数、カラー客数、トリートメント客数等)にそれぞれ意味づけを行い、1ヶ月の売上目標と各項目の目標を美容室の営業日数で割り、週単位で目標に対する達成状況を管理できるもの。
こうした経営改善システムが多くの取引先美容室に提案できるとして週報店システムをさらに進化させて開発したのが「旬報店システム」である。
「旬報店システム」は、美容室の日々の売上データをネットで相互接続して営業担当者が経営分析を実施し、売上データ等をもとに経営指導を行う。また、美容室と将来のビジョン(目標)を共有し、そこに至るまでの計画を立案して現状分析を行い、目標達成に向けた具体策を提案する。さらに、目標に対する日々の進捗状況を管理し、現状に合わせたさまざまな経営アドバイスを行うことで、美容室の業績向上を図る。特に「来店客数」と「客単価」に関連する項目についても目標数値を設定し、進捗状況を確認しながら進める。さらに、美容室スタッフの待遇改善や働きがいの創出、従業員の雇用、新規出店など事業発展の設計図を描いて美容室の接客サービス、財務改善、スタッフ育成といった経営強化を後押しする。
同社が頭髪化粧品販売の主力ユーザーとして欠かせない美容室の生産性向上や収益向上を目的とした経営改善システムを駆使したコンサル活動は、同社の強力な橋頭保を築いたものとして注目される。