【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【15】長寿の里① ~自然の素材、自前で生産、化粧品原料として活用~
2016.09.8
編集部
株式会社長寿の里(福岡県福岡市、社長宮田聖士氏)は「原料の生産や環境を重視した商品作り」をモットーにして、化粧品事業とへアサロン事業等を中心にビジネスを展開している。特に、経営のポリシーとして「界面活性剤などを使わない無添加を基本」にして自然素材(原料)の生産に携わり、自然の原料を活用した無添加化粧品の開発・販売に取り組んでいる。
同社が自然素材の原料を生産・加工しているのは、養蚕とシルクをはじめ柑橘類の原種である「ぼんたん」(写真)や火山灰「シラス」(同)など。いずれも、化粧品原料としての有効性に着目して生産・加工している。
養蚕の取り組みは、多良岳シルクファームがある佐賀県太良町の「養蚕業・養蚕技術を守りたい」「自然を利用して地域の過疎化をとめたい」という想いに、同社が「美容成分であるシルクは、美容原料として欠かせない身近なもの」として協力することを決断。2011年から桑の木栽培から始めた。 以降、地元の農家や観光協会などが協力して毎年2000本の桑の木を植樹。現在、繭の生産とシルクの加工が徐々に軌道に乗るなど、かつて過疎の村が今では、養蚕業の復活と地域の再生で活性化するなど変貌を遂げている。今後、安定した養蚕と地域の新たな雇用を生む出すため、法人化する方向で検討している。
柑橘類の原種「ぼんたん」の果皮の再利用にも取り組んでいる。直径20cm程度の大きな果実ぼんたんは、漬物以外に使い道がなくその処理方法に問題があった。そこで同社は、ぼんたんの洗浄効果に着目し、廃棄されていたぼんたんの果皮を利用してクレンジングに生まれ変わらせた。
火山とともに暮らす九州の人々にとって火山灰シラスは厄介者で、その有効活用が課題となっていた。火山灰が降り積もった土地では、農作物が育たず捨てる際には産業廃棄物の対象になっている。
同社は、浄化された火山灰シラスから、不純物を取り除き超微粒子に粉砕し、人の肌に使用しても問題ないバルーン化という球状に火山灰シラスを変化させ、化粧品原料としての有効活用を実現した。さらに、自然の素材生産に加えて原料から成分を抽出する際、アルコールなどを一切使用しない「添加物ゼロ」の発想で商品づくに繋げている。
こうした自然の素材を活用し、添加物ゼロに根差した商品つくりは、ベンチャーという創業精神に立脚しながら企業価値や社会的信用力の向上に努めるなど評価されてよい点といえる。