【連載】バイオベンチャーの光と影(2)バイオベンチャーの光と影

2013.05.28

特集

編集部

政府系VC産業革新が核酸医薬品開発ベンチャーに投資

ヒトの全遺伝子配列が解読(2003年)されて以降、遺伝子組み換え技術、細胞培養技術を使って医薬品、診断薬などを新たに創りだしたり(創薬)ヒトの細胞を培養して新たな皮膚、臓器などを作製して再生医療に繋げる医療分野の研究開発型企業バイオベンチャーが出現。現在、国内に約700社のバイオベンチャーが創薬、再生医療に取り組んでいる。

バイオベンチャーを起業段階で区分すると大学での研究成果を持って起業する大学発ベンチャーと企業内で医薬品の研究開発に従事していた社員が起業するスピンアウト型ベンチャーの2タイプに分別される。また、収益を生み出す事業段階で区分すると1.創薬に特化して事業を行う創薬ベンチャー、2.創薬研究に繋がる基盤技術を持ち製薬会社に対して技術のトランスファー(移転)や開発した医薬候補物質を提供する基盤技術型ベンチャー、3.製薬会社からライセンスの供与を受け新薬を開発する開発品導入型ベンチャー、4.細胞や遺伝子を分化・培養するなどして再生医療の研究開発を行う再生医療型ベンチャーとに分類される。

こうしたバイオベンチャーの多くは、抗体医薬品を中心に開発し市場投入している。しかし、開発費や製造コストが高いのが難点。ここへきて抗体医薬品にとって代わるバイオ医薬品として核酸医薬品の開発に凌ぎを削る状況にある。

核酸医薬品は、遺伝子を構成するデオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)を成分とした医薬品。疾患遺伝子そのものを抑制またはがん細胞など特定の標的分子に結合する抗体を投与するなどして治療するもの。従来の医薬品に比べ副作用が少なく化学合成で作れるため、製造コストが安くできる利点がある。

パプロファーマ(徳島市)は、遺伝子断片「核酸」をヘアピン状の立体構造にして副作用などの炎症を抑えることに繋げた。ジーンデザイン(大阪府)は、リボ核酸などを用いて核酸医薬品の探索から臨床試験の製造支援を実施。今年3月から自社開発の核酸合成機販売に乗り出した。

こうした核酸医薬品が注目される中、政府系VCの産業革新機構は、産学の技術を結集して日本独自の次世代核酸医薬の開発を目指すアクアセラピューティクス(福岡県久留米市)に対し4億5千万円の投資を行った。同機構が核酸医薬品開発のバイオベンチャーに投資したのは初のケース。
同社は、現社長吉川寿徳氏が大手製薬企業をスピンアウトして2012年3月に設立した。

現在、九州大学、東京医科大学、佐賀大学等と研究開発体制を構築して細胞の接着、遊走、増殖などに関与する細胞外マトリクスたん白のペリオスチンをターゲットにして核酸医薬の共同研究を行っており、産業革新機構の投資資金を活用して開発を加速する。また、上場を視野に入れている。

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