【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証⑩中小・ベンチャーの不良債権売買、M&Aビジネス台頭

2017.03.24

特集

編集部

我が国の経済成長率が1992年から1999年の8年間で平均1%と言う厳しい状況が続く中で、VCとベンチャー企業との間で金の呪縛による軋轢や倒産などによって20兆円にのぼる不良債権処理が大きな問題として浮上した。

こうした経済成長が鈍化する中、1999年2月に法務省が「債権管理回収に関する特別措置法」(通称・サービサー法=注釈)を施行した。

サービサー法は、不良債権処理を促進するため従来、弁護士のみに認めていた債権管理回収業を法務大臣による許可を受けた民間企業に対し解禁したもの。

これを契機に金融機関が相次いで系列の債権管理回収会社を設立し、銀行などとの間で業務委任、債権譲渡契約を交わして債権管理回収業務に乗り出した。

経営不振に陥った中小・ベンチャー企業に債権管理回収会社が債権取り立てに訪れる動きが顕著になった。

同法の施行は、金融機関が無税で債権を償却できるようになったことから、不良債権を一括売却する動きを強めた。同法が施行される前は、金融機関が債権を償却すると「債権者に贈与した」とみなされて利益供与により課税されていた。

金融機関の不良債権処理の一括売却に伴い債権購入者として登場したのが、外資系の金融機関や外資系投資ファンド会社。いずれも、経営不振の企業を再生(企業再生ファンド)又はM&A(*注釈)で買収した企業の価値を高めた後に売却して収益を上げるバイアウトファンドなどの投資ビジネスを行う会社だ。

折しも、持ち株制度や株式分割(*注釈)などが解禁され、投資ファンドのM&A環境が整備されたことや中小・ベンチャー企業向け株式市場の開設計画が現実味を帯びていたこともあって不良債権ビジネを目的とした外資系の金融機関、投資ファンドの対日進出が一挙に加速した。

当時、外資系の投資ファンドが企業再生可能な中小・ベンチャーに対して企業再生やM&Aを目的に活用したのが「MBO」(*注釈)と呼ばれる手法。

国内のVCは、不良債権ビジネス市場が形成された1999から出口戦略として、中小・ベンチャー企業の株式公開と並んでM&Aに力を入れるようになった。

*注釈

サービサー法
「債権管理回収業に関する特別措置法」のこと。平成11年2月1日に施行。不良債権の処理等を促進するため,弁護士法の特例として債権管理回収業を法務大臣による許可制をとることによって民間業者に解禁した

M&A
会社の合併(merger)と株の買占め(acquisition)を組み合わせた用語。企業買収の総称として用いられる

株式分割
1株を複数に分割し、発行済株式数を増やすこと。

MBO
Management Buyout(マネジメント・バイ・アウト)」の略で、企業のM&A( 合併・買収)の手法の一つ。経営陣が参加する企業買収のことをいう

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