注目の天然樹脂ヒオス・マスティックの科学的分析
2020.05.15
国際部
化粧品および健康食品の原材料として注目されているヒオス・マスティック・ガムの植物化学および薬理学的レビューが5月出版の「Journal of Ethnopharmacology」Volume 254に掲載された。
ヒオス・マスティック・ガムは、ギリシャのヒオス島で見られるマスティハの木(Pistacia Lentiscus Var.Chia)から採れる天然樹脂。古代ギリシャの時代から、胃腸薬または化粧品として地元住民に親しまれてきた。近年、伝統的な治療薬や芳香剤としてだけでなく、さまざまな生物学的特性を持つ強力な植物療法製品として再発見されており、昨年来、日本でもマスティハ製品の本格的な販売が始まっている。今回の研究では、Pistacia lentiscus var. Chiaに関するChiaは、Scopus、Sciencedirect、Pubmed、Web of Scienceなどの科学データベース、Chios Mastiha Growers Associationが提供する伝統的な書籍、および博士論文、修士論文を対象に文献の包括的なレビューを実施した。
ヒオス・マスティック・ガムには120を超える化学物質が同定されており、主成分として天然高分子、酸性および中性のトリテルペン、揮発性の二次代謝産物が確認されている。現在、植物抽出物および化合物は、in vitroおよびin vivoで、抗菌、抗炎症、抗酸化、抗潰瘍、抗糖尿病、心保護、および抗癌特性について研究されている。また、2015年には、欧州医薬品庁(EMA)で2つの治療適応症(軽度の消化不良と皮膚の炎症および軽度の創傷治癒)で伝統的に使用されているハーブ医薬品として承認された。そのほか、血漿脂質と血糖値の低下、口腔ケアの治療でも効果が実証されており、この特性は、トリテルペンと揮発性化合物に起因していると考えられている。今後は、ヒオス・マスティック・ガムの薬理学的な可能性をすべて明らかにするために、効率的な抽出、分離、分析技術の開発に焦点を当てる必要があると考えられた。