α-グルコシルルチンがヒトiPS細胞を活性化する作用機序を解明 ヘアケア製品応用へ

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2021.11.10

編集部

化粧品・空間デザイン等を手掛けるタカラベルモント株式会社(大阪市中央区、代表取締役会長兼社長:吉川 秀隆)は、東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所の島田幹男助教らとの共同研究を行い、α‐グルコシルルチン(αGルチン注)が ヒトiPS細胞の代謝を活性化することを明らかにした。

注:αGルチンは、天然フラボノイド※1であるルチンの誘導体であり、ルチンよりも水溶性が高い特性を持っている。

同社の化粧品研究開発部 三宅智子研究員、東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所の島田幹男助教らの研究グループは、このαGルチン幹細胞に対する作用を研究するために、ヒトiPS細胞から表皮角化細胞※2を作製し、線維芽細胞※3、iPS細胞、iPS細胞由来表皮角化細胞にαGルチンを作用させた時の遺伝子発現変化を次世代シークエンサー※4により網羅的に解析した。

その結果、iPS細胞では、αGルチン処理によって最初期遺伝子※5(immediate early gene; IEG)応答が起こり、細胞内代謝が一時的に増加することを発見した。また、表皮角化細胞では、ヒートショックプロテイン※6の発現が増加しているという変化も確認できた(図1)。

図1

さらにiPS細胞の多能性※7にαGルチンが及ぼす影響を調べたところ、多能性マーカー※8の発現は低下せず、多能性が維持されていることもわかった。(図2)。なお、同研究により、初めて幹細胞に対するαGルチンの作用機序が明らかになった。

図2

この共同研究をきっかけに、同社ではαGルチンに着目し、製品開発を行った。最初の応用展開としてαGルチンを配合したヘアケア製品「LebeL ONE」を日本での発売を先駆けに、順次グローバルでも展開していく。

※1 フラボノイド:植物によって合成される化合物でポリフェノールの一種。
※2 表皮角化細胞:皮膚の表皮に存在する細胞。表皮の最下層には、表皮幹細胞が存在し、表皮角化細胞を生み出し、表皮を作っていく重要な部分である。
※3 線維芽細胞:皮膚のハリや弾力のもととなるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を作る細胞。
※4 次世代シークエンサー:大量の DNA 塩基配列を解析できる装置。
※5 最初期遺伝子(immediate early gene; IEG):様々な細胞刺激によって迅速に活性化される遺伝子。
※6 ヒートショックプロテイン(Heat shock proteins; HSPs):細胞が熱等の刺激を受けたときに、細胞を保護するために発現するタンパク質。熱以外にも紫外線等に対する防御作用や表皮角化細胞の分化に関わることも報告されている。
※7 多能性:様々な細胞に分化する能力(多分化能)のこと。多能性幹細胞は多能性と自己複製能をもつ。多能性幹細胞は胚性幹細胞(ES 細胞)、iPS 細胞などがある。
※8 多能性マーカー:iPS 細胞などの多能性幹細胞が未分化状態の時に発現している分子。

 

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