日本の高度医療海を渡る(上)~政府主導の国際医療プロジェクト
2013.11.27
編集部
政府主導による国際医療プロジェクトの進展に伴いロシア、インドネシア、カンボジアなどで3件の民間医療プロジェクトが具体化した。また、平成25年度の政府主導による海外医療展開プロジェクト候補案件(実証調査事業)は29件にのぼっており、継続して相手国政府との交渉に力を入れてプロジェクトを具現化する。政府は、2020年度までに日本の海外医療拠点を10ヵ所程度設立し、世界の医療技術・サービス市場で現状の3倍1.5兆円を海外展開(アウトバンド)で稼ぎ出す。
国際医療プロジェクトの成果として2013年5月に社会医療法人北斗(北海道帯広市)は、ロシア連邦沿海州ウラジオストク市に「北斗画像診断センター」(写真)を開業し、運営を始めた。同センターは、日本とロシアが合弁で設立した「ヘルスケアコーポレーションホクト」(出資比率北斗49%、ロシア専門商社ピ―・ジェイ・エル15%、ロシア側2社36%出資)が現地医療機関から画像診断の受託や現地医療機関に対する人材教育などのネットワーク構築、北斗病院にロシアの患者を送るなどの事業運営を行う。
同センターの施設は、ロシア側の出資者が保有する保養施設「ストロイチュリ」の一部を改修したもの。日立などが提供した核磁気共鳴装置や断層撮像装置を導入しロシアで多い脳卒中、心筋梗塞の早期発見と予防医療を始めた。しかし、医療機器を扱えるロシア側の医療スタッフが限定的であるため当面、画像診断を習熟するまで画像診断センターと北斗同院とを専用回線で結び、同センターの全ての画像診断を北斗病院が行う。今後、手術・治療領域やリハビリテーション領域など事業化の可能性についても継続して検討していく。
愛知県内を中心に病院、介護施設を展開する医療法人偕行会(名古屋市)は、2013年12月にインドネシア・ジャカルタのオフィス、レジデンス、ショッピングなどから成るセネヤンスクエア内の1階と2階に内科を中心とした「カイコウカイクリニック」を開設し、近く診療を始める。日系企業の健康診断や糖尿病など慢性疾患患者の治療を行う。
同クリニックは、偕行会と株式会社JKR(偕行会のインドネシア事業運営会社)、名古屋放射線診療財団など5社がコンソーシアムを組み実現させた。偕行会では今後、日系の生損保会社と連携した集患システムの構築や日本国内の医療機関との連携などノウハウを蓄積しながら3年―4年以内にもジャカルタ郊外に200床から300床規模の病院を建設する。また、インドネシアを拠点にアセアン地域への展開を図る計画。
北原脳神経外科病院を中核とした医療法人KNI(八王子市)と日揮などがコンソーシアムを組んでカンボジア・プノンペンに緊急救命医療センターを開設する。病床数は40で、脳神経外科や内科、整形外科を設置する計画。日揮が建設を担い、2015年の開業を目指して来年3月にも同センターの建設着工に踏み切る。事業規模は、49億円。
特に、カンボジアにおける同センターの事業運営会社(現地法人)に政府系VCの産業革新機構が出資する。現地法人への出資は、機構が46%(18億8000万円)、日揮が51%(20億8000万円)、KNIが3%(1億2000万円)。残り8億2000万円は、国際協力機構(JICA)からの融資でまかなう。また、経産省の主導で立ち上げた官民連携組織「メディカルエクセレンスジャパン」は、医師、看護師の送り込みや海外患者の受け入れを行なう。NTTコミュニケーションズ、日本光電工業、テルモ、島津製作所などが運用実験の医療機器・情報システムなどの提供を行う方針。