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努力は天才に勝る!大竹政義校長が専門学生に伝える“美容師の心構え”とは?

資生堂学園校長が教える、就活に効く社会人マナーの基本

今回は、日本のヘア・メイク産業の成長期にトップアーティストとして活躍、現在でも第一線で活動しながら、資生堂学園 資生堂美容技術専門学校学校長として教鞭をとる大竹政義氏にお話を伺った。
数々の権威ある賞を受賞してきた同氏。しかし、創造性が重視されるヘア・メイク業界においても、“美容師は技術の高さだけでは半人前。お客様へのおもてなしの心が大切さ”と説く。美容師の卵にどのような思いを伝えているのだろうか。美容業界に向けたメッセージも併せて伺った。

花上 今回は、現在も第一線で活動を続けながら、資生堂学園の校長として教鞭をとられている大竹政義(マサ大竹)様に、美容というご職業に対する信念をお伺いしてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

大竹 こちらこそ、よろしくお願いいたします。

花上 大竹様は、ヘア・メイクというクリエイティビティの要素が大きい仕事においても、お客様に対する配慮を重視していらっしゃいます。その理由をお聞かせください。

大竹 美容師は、専門学校で技術を学び、国家資格を得た後に就職、店舗スタッフとして技術を学びながらお客様に接していきます。私は高校生の時に美容師を目指し、上京して前身の資生堂美容学校に入学しました。以来、がむしゃらにテクニックを学び続けたのですが、ある時お客様に接している際に、自分の至らなさにはっとしたのです。確かにヘア・メイクは創造性が必要とされる職業なのですが、決して芸術家ではありません。
なぜなら、目の前のお客様に、いかに満足していただけるか、心地よく時間を過ごしていただくか、これに心を砕かなければならないからです。また、美容師はお客様の肌や髪に直接触れる職業でもありますので、お客様の信頼を得る必要があります。高い技術はそのための一つの要素にすぎません。お客様への心遣いやきちんとしたマナー、そして人間的魅力。これらをバランスよく兼ね備えなければならないと考えています。

花上 常にお客様の満足を考えなければならないのですね。学生の方にはどのように指導をされているのでしょうか。

大竹 私はまず「あいさつを徹底しましょう」と指導しています。声をしっかり出して「おはようございます」と言うところから始めれば、そのうちきちんとしたあいさつができるようになります。多くの学生は、高校を卒業してからすぐ専門学校に入学しますから
すぐに就職しますか18歳~20歳と若い。卒業後はすぐに就職しますから、専門学校生のうちに社会人としてのマナーを身につけておかなければなりません。あいさつはもちろん、時間を守ること、約束を守ることなどといった、“人として当たり前のことができるようになりなさい”と教えています。技術偏重ではいけません。社会人として当然のことができ、お客様の気持ちに配慮できるようになることは、すべてのサービス産業において基本ではないでしょうか。

花上 お客様へのおもてなしが重要という点は、エステティシャンやセラピストとも共通しますね。

大竹 美容師という職業は、実は年齢は関係があるようでありません。若い感性や、反対に年齢とともに養われるものが必要な時もあるかもしれませんが、芸術家ではないので、“円熟味”や“熟練”の技が最優先に求められるとは限りません。それよりも、お客様と接する限られた時間のなかで、いかに自分の技術を最大限に発揮できるか、そしてそれを若いうちからできるようになるかが重要だと思います。

トップスタイリストとして日本の美容文化を切り拓く

花上 大竹様は、日本の美容産業の成長期に、常に第一線で活躍されていらっしゃいました。

大竹 改めて振り返ると、資生堂に所属していたからこそできたことが大きいかもしれません。入社以降はサロンワークと共に資生堂の広告、宣伝のビューティークリエーションを手がけてきました。自分の技術力に不安を覚えていた二十歳頃、国内のコンテストに参加してみないかと誘われたのです。そこで、他の参加者の技術の高さに圧倒されてしまいました。コンテストでも良い結果を得られず“出ると負け”の繰り返しで自信をなくしてしまった。しかしこれがいい刺激になり、美容雑誌で研究したり、自習を続けたりと努力をし、数年後には入賞することができました。25歳の時に、日本代表として選ばれてNYで開催される世界大会に出場する機会を得ました。ここでは、世界のレベルの高さを痛感しました。この頃に、これからどうすべきか、おぼろげながらわかってきました。
もう一つの転機となったのは、海外の一流コレクションに参加する機会を得たことです。当時はまだパリコレクションなどに行く日本人が少ない時代でもありました。そこで海外の一流のファッションデザイナーと出会い、そのプロフェッショナリズムを目の当たりにして衝撃を受けたのです。自分はまるで井の中の蛙ではないか、なんとかしてこの人たちに認められるようになりたいと、必死になって勉強を重ねました。

花上 日本人の中で、誰よりも早く大きな舞台に上がられたのですね。

大竹 しかし、その機会をもらったのは、やはり資生堂という会社にいたからでしょう。この会社に育ててもらったなと感謝しています。また、1960年代~80年代は、高度経済成長期でもあり、ヘア・メイク産業の成長期でもありました。そうした時代に貴重な経験をさせていただいたなとも感じています。現在は、恩返しのつもりで後進の育成に携わっています。

美容の世界においては“努力は天才に勝る”

花上 ところで、大竹様は「努力は天才に勝る」と仰っているそうですね。なぜでしょうか。

大竹 これまで長年ヘア・メイク産業に携わってきましたが、美容の世界で“天才”という人を見たことがない、というのが第一でしょうか。例えば、スポーツの世界では才能というのは大きく影響するのかもしれません。美容においても、昨年亡くなったヴィダル・サスーン氏などが高名ですね。時代の芽を捉えたり、新しいテクニックを生みだしたり、
といったセンスや才能は高く評価されています。
しかし、そもそも美容という分野は、人それぞれが持つ才能だけで、花開くわけではないと考えています。だからこそ、学生には、とにかく努力をしなさい、と教えているのです。私自身がコンテストにおいて成長し、それが現在の基礎となっていることから、学生にも大きな舞台で挑戦したり、競ったりということを勧めています。成功した体験は自信に繋がるからです。しかし一方で、いくら努力をしても報われないという時もあるのですね。そうした学生をケアすることも、教師には必要であるなと感じています。
また、一流になりたいならば、一流のものを見て審美眼を養いなさい、とも教えています。これも私が海外において学んだことの一つですね。世界のトップといわれる人たちには、技術はもちろん、優れた審美眼があるのです。これがないと勝負ができない。だからこそ、感性を養いなさいと教えています。今の学生は技術的には未熟であっても発想が豊かで、クリエイティビティがあると感じていますので、ぜひ活かしてほしいですね。学生には、制作発表の場などをはじめとして、私自身が直接、指導をする機会を設けています。

花上 最後に、美容業界へのメッセージをお願いします。

大竹 化粧も髪を結う文化も、有史以来から存在しています。女性はもちろん、男性だって美しくなりたいもの。その欲求は本能のようなものでしょう。人間の営みにおいて永遠に続く産業であり、それだけ価値のあるものだと感じています。ぜひ世の中のニーズを的確に捉え、役割を果たしていただきたいですね。

花上 今後は美容業界においても、海外で羽ばたく人材や、世界で認められる企業が出てくることを願っています。本日はありがとうございました。

ヘア・メイク業界にあっても、お客様への配慮が第一だというお話は、エステティック、美容業界に携わる人にとって重く受け止めるべきではないだろうか。エステティックサロンや美容サロンにおいては、お客様へのおもてなしという基本に立ち返ることが重要だ。お客様の満足を高めるために、一層の技術の向上と努力が求められる。


写真:延藤 学 文:岡本 茉衣(㈱美容経済新聞社 産業調査部 アナリスト)—2013年4月—

大竹政義(おおたけ・まさよし)マサ大竹/1948年新潟生まれ。資生堂美容学校(現・資生堂学園 資生堂美容技術専門学校)卒業後に㈱資生堂に入社。資生堂の宣伝広告や世界各都市のコレクション活動に携わった後、資生堂ビューティークリエーション研究所長、SABFA校長を歴任。2004年に「現代の名工」を受章、08年に黄綬褒章を受章。著作には「日本の美容家たち マサ大竹」(新美容出版株式会社)など。資生堂美容技術専門学校 校長。

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