資生堂・花王で共同開発の皮膚アレルギー試験法が技術特別賞を受賞

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2014.05.30

編集部

資生堂と花王が企業の枠を超えた共同研究によって開発した、動物実験をせずに、ヒト由来の細胞株を用いて化学物質のアレルギー性を正確、迅速かつ低コストで調べることができる皮膚感作性試験代替法「h-CLAT(エイチ・クラット)」が、一般社団法人日本化学工業協会の第46回日化協技術賞で「技術特別賞」を受賞。5月29日にパレスホテル東京で表彰式が行われた。6月2日に経団連会館で開催される「日化協シンポジウム2014」で受賞講演が行われる。

皮膚感作性試験とは、 皮膚に化学物質が接触し体が異物として認識すると、次に接触した時に皮膚アレルギーが起こるかどうかを調べるもの。原因物質は天然物由来化 合物から合成化合物、金属まで様々で、代表的なものとしてはニッケル、プラチナなどの金属や、うるし、サクラソウなどの植物がある。これまでは、国際標準の試験法とし て、実験動物試験が主に行われていた。

両社が開発した皮膚感作性試験代替法「h-CLAT」は、ヒト単球細胞株THP-1を被験物質と共に培養したのち、細胞膜表面のタンパク質CD86及びCD54を定量することで、被験物質の皮膚感作性の正確で迅速な判定を可能とした。本技術の特長は、細胞株を用いることで動物やヒトの血液を用いる必要が無いことだけでなく、試験条件を最適化することで実用化に足る信頼性と効率性の高い試験方法を確立した点。

資生堂と花王は、それぞれ独自に皮膚感作性試験代替法の研究を進めていたが、ほぼ同時期に、ヒト単球細胞株のひとつである“THP-1細胞” が、アレルギー物質と接触すると、T細胞にアレルギー物質の存在を提示するタンパク質の「CD86」と「CD54」を増やすことを発見した。これにより “THP-1細胞”が皮膚感作性試験代替法に用いることができることを見出し、2003年1月より共同研究を進めてきた。その結果、従来の国際標準である LLNAと同等の精度で感作性を予測できるh-CLATの開発に成功した。

動物愛護や効率性の観点より動物を用いない化学物質の安全評価方法の開発が期待されているが、h-CLATは、実験動物を用いる方法に比べて、サンプル量が20~30分の1、コストが50分の1、時間が14分の1と、少量のサンプルで低コスト、短時間で高精度な感作性の予測ができる。

h-CLATは化粧品原料のみならず医薬品や医療材料などの評価やアレルギーの基礎研究などで幅広い応用が始まっている。本技術は、厚生労働省や他企業などの支援も受けて試験法の有効性と有用性を検証がなされ、その後、欧州代替法評価センターでの妥当性検証を終了し、 2015年にOECD(経済協力開発機構)でガイドライン化を目指している。

「日化協技術賞」は、優れた化学技術の開発や工業化によって化学産業ならびに経済社会の発展に寄与した事業者を表彰する制度。毎年、化学に関連する事業者から業績を公募し、総合賞、技術特別賞、環境技術賞の3分野でそれぞれ受賞事業者を選定している。うち、技術特別賞は独創的技術・改良技術で、科学技術の進歩に寄与したものを表彰している。

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