発毛・育毛剤の研究開発(下)~資生堂、毛髪細胞移植の技術開発へ
2014.09.26
編集部
株式会社資生堂(東京都中央区)は、日本初の洋風調剤薬局として1872年(明治5年)に創業。1898年には「香油 花つばき」、1915年にヘアトニック「フローリン」を発売するなど創業期から頭髪、毛髪研究に取り組んできた。1982年には「薬用不老林」、2005年には、育毛成分「アデノシン」(日本、欧米、韓国などで特許取得)を配合した「薬用アデノゲン」を商品化して販売。さらに2011年2月からアデノシンや和漢植物成分などを配合して商品化した「アデノバイタル」を商品化し、国内美容サロン向けに投入するなど商品化の変遷を辿っている。
現在の主力商品「アデノバイタル」は、国内約31000店にのぼる美容サロンで販売。また、2012年3月からは、タイを皮切りに香港、台湾、マレーシア、シンガポールなどアジア市場で順次、販売を開始するなどグローバル化を加速している。
しかし、同社の発毛・育毛剤の研究開発は、ここへきて毛髪の再生医療へと大きく舵を切った。
同社は、今年5月に毛髪再生医療の研究開発拠点「資生冤罪堂細胞加工培養センター」(呼称・スペック)を神戸バイオメディカル創造センター内(BMA=写真)に開設した。
現在、研究施設「スペック」では、2013年7月にカナダのバイオベンチャー企業「レプリセル社」と技術提携契約を踏まえて技術導入した脱毛症、薄毛対応の「毛髪再生医療技術」(RCH-01)について自社開発の毛髪技術との組み合わせや正常な毛乳頭細胞を培養し、再生させるメカニズムの解明、細胞培養・加工技術の開発などに取り組んでいる。レプリセル社が開発した毛髪再生医療技術は、医師が脱毛症患者の頭皮から採取した特定の細胞(毛球部毛根鞘細胞)を培養した後、脱毛部位に移植(注入)し、退縮した毛包を再活性化させることで、脱毛部位の毛髪成長を促す「自家細胞移植技術」。
同技術の特性は
〇植毛のように広範な頭皮の切除は不要なため、外科施術における身体的負担が小さい
〇患者自身の細胞を移植するため、移植後の拒絶反応などのリスクが小さい
〇育毛料と比べて一度の施術で効果の持続が期待できる
〇男女問わず有毛部のない方でも少量の細胞から培養が可能で、植毛に比べて応用範囲は広いなど。
万能細胞(iPS細胞)に代表される再生医療技術が急速に進展する中で、化粧品メーカーが毛髪再生医療技術に取り組むのは、初のケース。
今後、毛髪再生の技術的課題を克服して実用化に繋げられるか、禿げ・脱毛解消への期待が膨らむ。
- 参考リンク
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株式会社資生堂