薬用植物栽培にはオープンイノベーションが必要

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2017.06.7

編集部

一般社団法人 漢方産業化推進研究会(代表理事・渡辺賢治氏)の2017年度第1回総会が7日、都内で開催され、同会アドバイザーでグリーン企画株式会社(千葉県柏市)会長の加藤一郎氏は「薬用植物栽培には各企業の自賄主義を排したオープンイノベーションが必要」と訴えた。

加藤氏は「地方創生と薬用植物~薬用植物栽培から見えてきたもの」と題して講演。これまで薬用植物は、学問の縦割り行政の狭間にあったため、品種登録は10数品種にとどまっている。「種苗会社などによる薬用植物の品種開発に対する研究投資はほとんど行われてこなかった」(加藤氏)との認識を示した。

また、薬用植物を機能性植物(野菜)としてとらえ、食薬区分の「非医」に分類される部位を有効利用し、捨てる部位を少なくすることが生産者にとって重要であるとした。当帰を例に挙げると、根は薬だが、葉は食として利用可能。さらに「茎については食薬区分に記載がないが、農水省によると、伝統的に食べていれば食として問題ない」(加藤氏)。

さらに、生薬由来の機能性植物製品は国民の嗜好性が低いためグローバルな商品になりうるとして、漢方薬原料だけでなく、化粧品、食品添加剤、香料、健康食品へ展開が見込まれるとした。

日本薬局方が定める品質規格をクリアできる栽培技術の問題にも言及。「生産者に技術指導を行うことができる県行政、製薬メーカーがどれだけいるか」(加藤氏)と疑問を呈し、今後の課題との認識を示した。また、農薬メーカーによる新規登録農薬の申請がほとんど行われていない現状を指摘。「JAと行政が一緒になって取り組むべき問題」(同氏)として、申請を増やしていくことを訴えた。

生薬原料として、収穫までに長い年数が必要な薬用植物もあり、どう収入を確保するかという問題もある。これについては、例えば2年もののオタネニンジンを取り上げ、「(薬として使える)含有量に達していない場合、捨てられてしまうので、まずは薬膳として提供する。食としての生産が定着してきたら、次に生薬原料としての栽培に移行すればよい」(加藤氏)との考えを示した。

地方創生に向けては、薬用植物を核と位置づけることを強調。「地方行政、農家、JA、大学、薬膳料理専門家、食品加工メーカー、レストランなどがコンソーシアムを形成し、そこで製品化したものを全国に流通させる企業と連携する体制を構築することが重要」(加藤氏)といい、その際にオープンイノベーションの考え方を取り入れるとともに、医療分野と農業分野の医農連携を図ることを訴えた。

参考リンク
一般社団法人 漢方産業化推進研究会

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