虚弱児は漢方が得意とするところ

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2017.12.19

編集部

一般財団法人子ども健やか財団(理事長・三橋弘喜氏)主催の茶話会「漢方のお話」が15日、都内で開催され、講師に招かれた慶應義塾大学環境情報学部教授で漢方専門医の渡辺賢治氏は、「虚弱児は漢方が得意とするところ」と強調し、子供の健康を守るための漢方的養生法を解説した。

講演では、漢方医学と現代医学の違いに言及。例えば、現代医学が「痛み」を殺すことに焦点を当てるのに対して、「漢方は痛みを止め、辛さを和らげる」(渡辺氏)ことに重点が置かれている。また、現代医学は集団で得られた知見を個人に当てはめようとするものであるのに対して、漢方医学では個々人の個体差を基本に置いた治療医学であることを紹介した。

近年、学校の朝礼などで長時間起立していられず倒れてしまう虚弱体質の児童が見受けられる。虚弱体質とは、一年中カゼをひきやすく、すぐ熱を出したり嘔吐したりするが、いろいろ検査をしても特に異常が見つからない体質のこと。こうした虚弱児に対して漢方はとても効果が高いとして、「90%治す自信がある」(渡辺氏)と強調。漢方薬を飲むと体質が改善されて、「(病気の)再発もしない」(同氏)という効果も期待できる。

虚弱児は、さまざまに分類される。例えば、食が細く腹痛などが多い「消化器型」、カゼをひきやすく気管支炎などがある「呼吸器型」、扁桃炎で熱を出しやすい「扁桃型」、イライラや夜泣きなどが多い「神経型」、めまい、立ちくらみなど起立性調節障害がある「循環器型」といった具合だ。

こうした分類に対して、それぞれ適切な漢方薬を紹介。例えば「消化器型」には小建中湯、「神経型」には抑肝散、「循環器型」には苓桂朮甘湯などといった処方がある。当日、会場では小建中湯の試飲が行われ、参加者らからは「甘くて飲みやすい」などといった声が挙がった。

小建中湯は、胃腸を意味する「中」を「建て直す」という意味が込められている。胃腸の調子を良くできるので、虚弱体質の改善などに使われる処方となっている。「アトピー性皮膚炎も改善でき、汎用性は広い。全国の子供に飲んでほしい」(渡辺氏)と訴えた。

一方、養生の大切さにも言及。カゼに処方される桂枝湯について「飲んだ後に熱いお粥を食べて、布団をかぶって寝て汗をかく」(渡辺氏)といった漢方古典『傷寒論』にある記載を紹介。「アイスクリームを食べて体を冷やしては困る」(同氏)といい、漢方治療中の養生の大切さを強調した。

また、神奈川県が推進している未病プロジェクトにも触れつつ、子供の未病を改善するための食養生も重要と指摘。季節に合わせた薬膳を勧めるとともに、咀嚼の大切さも強調した。幅広い世代にまたがって咀嚼を学習し合う臨床研究の中では、「咀嚼の回数が増えるとかけっこがはやくなった」(渡辺氏)というケースもあったという。未病はどの時点からはじまっているかわからないものの、「早い時期から軌道修正できれば、大人になって苦労しない。未病の本質は教育に尽きる」(同氏)と訴えた。

参考リンク
一般財団法人 子ども健やか財団

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