【連載】変貌する化粧品業界②ロート製薬、化粧品売上1100億円超、比率66%に

2018.10.23

特集

編集部

先発組として化粧品分野に参入(2002年)した製薬メーカーロート製薬株式会社(大阪府大阪市)のスキンケア事業(化粧品事業)が1000億円の大台を突破。本業の目薬(アイケア)を凌駕する業績を上げている。

同社の2017年3月期におけるスキンケア売上高は、1018億4400万円と総売上高に占めるスキンケア売上比率は66%に達した。また、2018年3月期におけるスキンケア売上高は、1117億2500万円と総売上高に占める化粧品事業の売上比率は65%となっている。
こうした化粧品専用企業でない異業種の企業が化粧品事業で約7割近い売上比率を占めているのはきわめて稀なケース。現在、同社を化粧品メーカーと呼ぶ企業も少なくない。

では、同社がなぜ化粧品分野に参入したのか。同社は1909年に「ロート目薬」を発売して以来、目薬事業を主として成長してきた。しかし、2000年頃から目薬市場は、成熟市場となり伸び悩みはじめた。
そこで同社は、新たな収益源を確保するために、化粧品事業という新市場への参入を決意した。
同社が化粧品市場を選択した理由は「外部環境の変化」と「経営資源」のシナジーという2つの要因に起因する。
外部環境の変化としては、2002年に実施された薬事法改正がある。薬事法改正により化粧品業界では、法律によって規制されていた製造の全行程をアウトソーシングできるようにった。
そのため、化粧品産業と比較的研究分野が近い医薬品企業などにとっては、化粧品市場参入への垣根が低くなった。経営資源のシナジーについては、製薬企業としてのブランドカが大きい。
これは、化粧品を販売するにあたり、一般的な化粧品ではなく「機能性化粧品」という新たな切り口から製品をアピールする際のカギとなった。
同社は、消費者から医薬品メーカーとして認知されていたため「機能性」をアピールすることで、参入時の差別化が図れた。また、ドラッグストアをはじめとする流通チャネルを保持していたことも奏功した。また、ドラッグストアで化粧品を販売することで、機能性をアピールし、他社との差別化を図った。
さらに、リップクリームなどのメンソレーター事業を保有していたため、新たに化粧品事業を開始するにあたり多くの知見が共有でき、研究開発費を抑えることができた。

ここへきて同社は、化粧品事業が好調なうちに新規分野に進出し、さらなる成長・発展を図る。
その新分野への挑戦が再生医療への進出だ。同社がなぜ再生医療に挑戦するのか。理由は2つある。
1つは、再生医療に欠かせない「細胞を扱う技術」と「無菌製剤技術」を持っていること。目薬やスキンケア製品の研究開発で築いた礎が、新規事業を支える基盤になり得るとの考えによる。すでに「脂肪由来間葉系幹細胞」に着目した研究に着手しており、今後、創薬、再生技術を応用した化粧品ブランド等の開発などを実現していく方針。

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