【連載】大手化粧品会社の研究(56)ファンケルの会社研究 ~細胞研究に力、リプロセル、キレートジャパン等と共同開発~(下)

2018.11.1

特集

編集部

ファンケルの研究開発活動の中で、細胞を扱う研究開発に力を入れて取り組んでいる。バイオベンチャーの株式会社リプロセル(神奈川県横浜市)とヒトIPS細胞由来のモデル細胞開発に関する受託契約を締結(2016年11月)した。受託契約は、ファンケルがアンチエイジングに着目した製品開発を行うために必要なヒトIPS細胞由来のモデル細胞をリプロセルが開発し、ファンケルに提供するもの。
受託契約を交わして以来、2018年10月には、両社が共同で取り組んでいた高精度のヒトIPS由来感覚神経細胞株の作成に成功するなど大きな成果を生んでいる。

両社共同で開発したヒトIPS由来感覚神経細胞は、ヒトIPS細胞から分化誘導して得た痛みやかゆみなどの刺激を脳に伝達するヒト感覚神経線維細胞。
ヒトIPS由来感覚神経細胞は、分化誘導効率が高いことや凍結保存が可能などの特徴を持つため、各種実験に利用しやすい細胞。
同細胞を研究に使用することで、人工的に培養することができない感覚神経の研究を容易に進めることができると期待されている。

このため、ファンケルは、2018年度から順天堂大学大学院医学研究科に設置した「抗加齢皮膚医学研究講座」でヒトIPS由来感覚神経細胞を研究に応用し、加齢に伴う皮膚老化やかゆみのメカニズムを解明してその対策方法と早期の製品開発を目指す研究を始めた。
順天堂大の研究グループは、アトピー性皮膚炎などでバリア機能が低下した皮膚について真皮内に存在している感覚神経線維が表皮内に侵入し、角層のすぐ下まで伸びて全体に広がることを発見するなどかゆみの知覚メカニズムを解明してきた。しかし、ヒトの感覚神経細胞は身体から取り出して培養することができないため、感覚神経細胞の機能評価や他の皮膚を構成する細胞との相互作用の解明などについて、研究課題が多く残されていた。

今度、リプロセルと共同で開発したヒトIPS由来感覚神経細胞は、約70パーセントが感覚神経細胞であることが確認されており、分化誘導効率が高いことや凍結保存が可能であることなどから、同細胞を研究に使用することで、人工的に培養することができない感覚神経の研究に本格的に取り入れることにした。
化粧品、医薬品業界は、ヒトIPS 細胞を使った開発を一段と活発化するなかで「細胞製品」の開発・販売だけでなく細胞作製の受託サービスの需要が拡大している。

ファンケルは、IPS 細胞の幹細胞培養技術を応用して新規化粧品の共同開発をキレートジャパンと開始するなど新規事業創出につなげる狙い。引き続き,細胞ビジネスに取り組む動きを鮮明にしていくとみられる。

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