【連載】大手化粧品会社の研究(58)ホソカワミクロンの会社研究 ~超微細化とDDS技術開発、化粧品OEM・DDS受託事業も~(下)

2018.11.9

特集

編集部

ホソカワミクロンが化粧品「ナノクリスフェア」や育毛剤「ナノインパクト」の商品化を実現したのは、直径が140ナノに設計したPLGA(乳酸グリコール酸共重合体)ナノカプセル(粒子)にビタミンC誘導体などの美肌成分を封入したナノ化技術と美肌成分を封入した粒子を角質層にまで伝送・伝搬する薬物伝搬伝送システム(ドラッグデリバリーシステム)(ÐDS)の開発に負うところが大きい。

PLGAナノカプセル技術は
①生体内で加水分解や酵素分解を受けて乳酸とグリコール酸に分解。最終的には、TCA回路を経て水と二酸化炭素に分解後,体外へ排泄される
②生体適合性高分子PLGA(乳酸とグリコール酸共重合体)の粒子の大きさを平均200ナノメートル(nm)に微細化しビタミンC誘導体など様々な有効成分を封入可能(ナノコンポジット化)
PLGAは、生体内に存在する乳酸とグリコール酸がエステル結合によってランダム共重合したもので、その粒子サイズがナノオーダーである点に特徴がある。
従来のミクロン粒子に比べてナノ化されることで比表面積が急増し,生体との相互作用が顕著になり,粘膜層内への滞留・付着性が増す。
そのため,吸収部位での薬物濃度が上がり徐放効果も加わって薬物の吸収性向上と薬効の持続性を実現している。

PLGAナノ粒子は、化粧品の薬物伝送(ÐÐS)システム製材用材料として
①安全・安心
②様々な有効成分を封入できる
③薬物伝送システムの機能を持つなどの特異性を持つ。
また、DDS技術は、微細化した粒子の中にビタミC誘導体などの有効成分を封入して角質層内へ搬送する製材技術。皮膚の表皮から真皮まで効率よく浸透させ、12時間角質層に留まりながら放出し続ける。

こうしたPLGAナノカプセルとDDS技術の開発によって
①薬物の吸収性の向上=ナノサイズであるため,マイクロ粒子と比較して生体粘膜への付着性,親和性が増大
② 放出性の制御=基材の加水分解に伴う,内包薬物の徐放化とそれに伴う持続的な薬効の発現
③ 安定性の改善=薬物(ペプチド、遺伝子、抗体、機能性薬剤など)の酵素分解からの抑制が可能などの特異性を実現した。

いずれの技術開発は、同社の粉体研究所や美容化学研究所などが中心となって薬物を封入した生体適合性ナノ粒子の開発とナノ粒子を用いた新規ナノDDS製剤の研究開発の中から生みだした。

同社は、育毛剤、化粧品の販売に加えてPLGAナノ粒子技術による化粧品OEMとDDS受託研究の事業展開も行っている。

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