【連載】化粧特許と知的財産権⑨ヒカリ、アジアで理美容師対象の実技研修開催(下)

2019.06.21

特集

編集部

ヒカリは、カット技術の向上を支援するため、啓発活動の一環としてアジアを中心に理美容師を対象にした実技研修を開催している。
研修は、同社が長年培ってきたノウハウと技術力を注ぎ込んだ手作りのハサミを使って行われる。受講者は、一流の理美容師を目指す若い層が参加し、手作りハサミの使い心地と切れ味に感激しながら実技研修に参加している。
同社は、アジアでの実技研修について「有効なブランディング戦略に基づいて打ち出したもの。魅力を実感してもらうことが将来の顧客獲得への一歩と捉えている」と説く。

こうした中、手作りブランドを脅かす商標侵害が中国で起きている。同社は「光」というロゴを登録商標し、ハサミに刻印している。しかし、中国の企業が同社を模倣して全く同じロゴを商標登録してしまった。そこで同社は、中国で販売する商品については「HKR」というヒカリの子音をロゴとして刻印している。現地のプロの理美容師の間では「光」ロゴは粗悪な偽物で、「HKR」が本物だということが知れ渡っている。この技術力に裏打ちされたブランドだからこそ、中国の商標権所有企業から権利購入の依頼があった際にも、自信を持って断った。

ところで同社は「発明はできるだけ権利化する」という方針で対応してきた。海外向け製品についても、定期的に現地の販売店からトレンドや動向をヒアリング。こうした情報を基に今まで「切りやすい形状」や「大きく刃を開いても触点部分がグラグラしない機能」「グリップの形」などさまざまな視点から特許化し、権利化してきた。しかし、他社には真似できない技術を守るため、あえて権利化はしないケースもある。刃の形状や作り方は、図面も作らない徹底ぶり。「こだわりの部分は、当社の知的資産。データ化せず、職人に感覚で覚えてもらっている。熟練の職人が手掛ける技は、毎日の仕事を通して次世代の職人へと受け継がれている。

従業員は入社後、配属された部門にかかわらず、全員がハサミの構造や刃付けなどを勉強する。すべての従業員がハサミに関する深い知見を持っていることが、同社が評価される理由の一つとなっている。
一方、国内外の販売代理店と契約を結ぶ際は、同社での研磨技術の研修・技術習得を必ず条件に入れている。販売した店舗がメンテナンスまで行うことでユーザーの信頼と利便性を高め、それがヒカリブランドの価値を守ることにつながるとの考えだ。

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