【連載】化粧品・美容各社の業績と企業買収⑧化粧品・美容各社の業績と企業買収 ~化粧品会社の企業買収は経営戦略の一環~(上)

2019.10.28

特集

編集部

化粧品各社や美容サロン企業の企業買収(M&A)は、重要な経営戦略の一環として捉えられる。化粧品各社のM&Aは、一時ほどの勢いは影を潜めたとはいえ、今なお、本業での儲けや株価収益等で稼いだ潤沢な手元資金を活用して国内、海外の企業買収に振り向ける姿勢を崩していない。

M&Aの指向が根強い背景には、化粧品業界の国内需要が頭打ち状態にあることが指摘される。
消費者の節約志向が進み、商品単価自体が下がっていることや少子高齢化で人口が減少し先行き利益が減少するとの見方が強い。 国内需要が見込めない場合、おのずと海外に活路を見出さざるを得ないとの認識で一致している。この点に、国内化粧品各社の海外化粧品関連企業をターゲットにしたM&A指向の流れが見える。
ただし、従来のM&Aは、有名ブランドを自社に取り込むためや研究開発施設、製造工場等の取得を目的とする買収が中心だった。が、昨今は、販路拡大を狙うM&Aや本業の独自技術を化粧品開発に生かすためのM&Aも見られるようになるなど多様化している。

M&Aとは、英語のMergers and Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジションズ)の頭文字をとったもの。主に、企業の支配権(経営権)を手に入れる買収のことを指す。
M&Aの目的は、M&Aによって企業を買収する側(買い手)にとって経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報など)を取得することで、中核事業の強化をはじめ自社における弱みの補完・補充、新規分野への進出による事業拡大、新規事業の立ち上げによる収益確保などを狙いとして行う。一方、会社を買収される側(売り手)のM&A目的は「後継者問題の解消」や「業績不振による事業再生」というケースが主な目的。

企業を買収するにあたって様々な手法や形態がある。主な買収の方法として株式を取得する株式譲渡」、「株式交換」、「第三者割当増資」や事業を取得する「事業譲渡」、「会社分割」などがある。
株式譲渡は、個人または法人が保有する株式を売買することで、株主の地位を他者に移転させる方法。原則として株主が代わる以外に大きな影響はなく会社の事業はそのまま存続する。許認可や取引先との契約などもそのまま引き継ぐことができるため、対外的な影響は最小限に済む点がメリット。
株式交換は、完全親子会社関係をつくるために使われる手法。株式を取得する対価は、原則として現金でなく買手企業が自社の株式を発行するため買手企業は、手元資金がなくても支配権を獲得できるメリットがある。半面、売手側としては、現金を受け取ることができないなどのデメリットがある。

#

↑