【連載】化粧品・美容各社の業績と企業買収⑧化粧品・美容各社の業績と企業買収 ~2018年の化粧品M&A件数は、約30件程度~(下)

2019.10.29

特集

編集部

M&Aの主な手法として会社が権利義務の全部または一部を他の会社に承継させる会社分割がある。会社分割には「吸収分割」と「新設分割」がある。
「吸収分割」は、切り出す事業を既存の会社に承継させる手法。「新設分割」は、切り出す事業を新しく設立する法人に承継させる手法。
第三者割当増資は、会社が特定の第三者に対して新株を引き受ける権利を割り当てる増資形態を指す。

これらの手法は、最もポピュラーな買収法といえる。この手法以外に特殊な株式取得の方法としてTOB(株式公開買い付け)やMBO(マネジメント・バイアウト)がある。
TOB(Take Over Bid)とは、株式公開買い付けのことで、金融商品取引法に則り、支配権を及ぼしたい上場企業の株式を取得するために、購入株価と株数、買付日を宣言した上で、不特定多数の株主から株式を買い取る手法のこと。
TOBは、一気に大量の株式を宣言した株価で購入するため、目標株式の買収金額が予想できるメリットがある。また、買付予定株数に達しなかった場合は、キャンセルできるため、買付失敗のリスクが少ない。一方、公開のため買収目的が明らかになるため、買収対象企業が第三者割当増資などを利用した買収防衛策を発動する機会を与える。MBO(マネジメント・バイアウト) は、経営陣や従業員が銀行やファンドから資金を調達して自社企業の株式を買収する手法。
MBOの目的として中長期的な経営戦略を目指すことや敵対的買収からの防衛、中小企業の事業承継対策などがある。

M&Aで会社を買収する買手企業にとって他社から経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報など)を取り入れることで、中核にしている事業の強化、弱みの補完、新規事業への進出などのメリットがある。また、売上規模の拡大、スケールメリットによるコスト削減、技術・ノウハウ・人材の獲得などのメリットが生じる。

ともあれ、化粧品大手各社は当面、オリンピックまでのインパウンド需要に支えられて消費は好調に推移すると見込む。が、オリンピック以降、インパウンド需要の反動、人口減少による国内需要の減退が避けられないと読む。そのためにもM&Aという錦の御旗は、降ろさずに臨機応変かつ戦略的に活用していくとの認識にたつ。

ちなみに日本企業全体のM&A件数は、専門調査機関の調べで2018年は、3850件と前年比26%増加した。このうち、化粧品にかかわる国内、海外合わせた企業買収(M&A)件数は、2018年で約30件程度と推計している。
中でも目立つのが、化粧品大手企業の新技術の取り込みを狙った海外ベンチャー企業のM&Aを実施する流れだ。

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