【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑥細胞と抗齢化、脂肪幹細胞で皮膚活性(上)

2020.02.17

特集

編集部

医学の分野に限らずアンチエイジング化粧品開発のために皮膚幹細胞の研究や皮膚疾患の遺伝子研究、IPS細胞の研究等に取り組む動きが活発だ。美容の世界においても再生医療を応用した技術はすでに実用化され、豊胸術や肌のしわなどを改善するアンチエイジング治療、薄毛治療などが普及しつつある。

再生医療の鍵を握り他の細胞に変化する母なる細胞といわれるのが「幹細胞」。幹細胞は、人間の体が60兆個の細胞で構成され、その細胞を生み出す元となる細胞。体のいたるところに存在して各臓器や血液、皮膚などをつくり出している。
幹細胞には二つの特出した能力がある。一つは、自分と全く同じ細胞を複製することができる能力(自己複製能)で、幹細胞を長期に渡り維持することができる。もう一つは、様々な種類の細胞へ分化する能力(多分化能)で、これにより病気やケガで組織がダメージを受けても幹細胞が新しい細胞を生み出し、再生する。

幹細胞は、主に三つに分類される。
①受精卵からつくられる幹細胞で、すべての細胞になる能力がある「ES細胞」(胚性幹細胞)
②皮膚など体細胞から取り出した細胞に特定の遺伝子を入れて樹立した「IPS細胞」
③生体の各組織に存在し、特定の細胞に分化する能力を持つ「体性幹細胞」の3つ。
現在、体性幹細胞の中で脂肪幹細胞に着目して難治性疾患や希少疾患などの治療に貢献する医薬品、化粧品の早期実用化を目指す動きが顕著。中でも、医学分野に限らずアンチエイジング化粧品開発のために皮膚幹細胞の研究、皮膚疾患の遺伝子研究、IPS細胞の研究等に取り組む動きがみられる。

再生医療において研究が進む脂肪幹細胞は、様々なタンパク質、酵素、成長因子を出すことが判明している。その多様な働きにより、組織をも再生する力を持つことも期待されており、この脂肪幹細胞を皮膚に応用することで、皮膚そのものをつくり変えることができる未来型のエイジングケアの実現が羨望されている。

脂肪幹細胞は、線維芽細胞の真下にある皮下組織に存在する間葉系の幹細胞。脂肪幹細胞は細胞の活性化を促すたんぱく質を豊富に産生することなどから、そのポテンシャルは高い。
そのため現在実施されている間葉系幹細胞研究のなかで、脂肪組織由来幹細胞は現在最も実用化に近づいている。

脂肪組織由来幹細胞の存在が確認されたのは2001年で大きな注目を集めた。その理由として脂肪組織が体表面に近い部分に存在するため、比較的安全に採取しやすいこと。同時に、全身にくまなく分布するため、大量に採取しやすいことが挙げられる。最近では、脂肪以外にも骨や軟骨などさまざまな組織への分化する多分化能を持ち合わせていることでポテンシャルが上がり応用範囲が広がっている。
図に脂肪幹細胞の分化を示す。

#

↑