【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑦表情・印象研究・化粧品各社、印象のメカニズム解明へ(上)

2020.02.25

特集

編集部

「自分の顔の印象を他人はどのように見ているのか」―。大手化粧品メーカー各社が「人の見た目の印象」を科学的に解明しようと研究に取り組んでいる。対人印象の効果を上げるため、化粧品に求める需要は根強い。しかし、顔の動きやメークの仕上がりが他者の潜在意識にどのように働きかけるのかは、未知な部分が多い。大手化粧品メーカー各社は、未知の部分を解明することで、新たな化粧品の開発や化粧方法の提案に繋げる狙い。

人間関係を築くうえで第一印象は、とても重要な要素といえる。人は、見た目が9割ともいわれるように第一印象は、人間関係を作る初頭効果を及ぼす。特に、第一印象は、出会った瞬間に決まるもので一度、形成された第一印象を払拭するのは難しくその後の評価や好感度にも大きな影響を及ぼす。

印象形成で重要なのは、見た目、表情、しぐさなどの「視覚」でその割合は55%に上る。次いで声の特徴、話すテンポなどの「聴覚」が38%、会話の内容などの「言語」が7%となっている。これらは、米国の心理学者メラビアンが心理研究の実験から導き出したもの。

メラビアン法則では「視覚」、「聴覚」、「言語」の3つの要素の中で視覚情報が最も重要と指摘、話の内容にこだわるよりも清潔感や相手に対する好意的な態度などが重要になるというもの。また、聴覚情報は、話した内容ではなく話し方のことを指す。例えば、「相手の目を見て誠意のある話し方をする」「伝わりやすく聞き取りやすいトーンで話す」などが挙げられる。 第一印象を決めるうえで「言語の影響」は小さいとしている。
メラビアンの法則は、矛盾したメッセージが発せられた時の人の受けとめ方について、人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかを判断する俗流解釈として知られる。
こうしたメラビアン法則に乗っといて国内の化粧品各社が印象研究に乗り出しているもの。「若い見た目」は手に入るのか。その検証に道を開いたのが株式会社ポーラ・オルビスホールディングス(東京都中央区)である。

同社は正面から見た真顔と、さまざまな顔の角度や表情を対象に年齢印象評価試験を実施した。試験結果から正面から顔を見るよりも、下、右下、右、右上から見た顔の方が若く見られることが判明。また、これまで表情がある方が世代を問わず、共通して「若々しく見える」と考えられていた。しかし、30代までは若く見られた一方で「40歳を超えると老けた印象を与える」ことが試験から判明したという。

特に同社は、「頬」の動きが見た目の年齢判断に関係することを突き止めた点が賞賛される。表情の変化に頬部の皮膚の動きが遅れ「潜在的な老け顔の印象を与える」ことを突き止めた。
これにより同社は、頬の動きや肌表面に対応したメーキャップ商品を開発して市場投入するなど先導的な活躍を見せている。

同社は、顔の構造と形状変化の関係から将来の老け方に一定の法則があることも発見している。切れ長の細い目や顔幅が短い人は額のシワに注意」「たれ目や顎が細い人は法令線が目立つ」といった症例を方程式化。20~30年後の実際の顔の印象を予測するシミュレーションを構築した。

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