【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑨リポソーム技術、理想的な運搬体(DDS)として注目(上)

2020.03.9

特集

編集部

リポソームは、細胞膜や生体膜の構成成分であるリン脂質を利用して人工的に作成するナノサイズの粒子で脂質二分子膜(1つの分子内に水になじむ「親水基」と油になじむ「親油基」(疎水基)の両方を持つ分子の総称)からなる脂質小胞体。
リポソームは、たまねぎのような構造をした美容成分を運ぶのに優れた多重層カプセル。形状は、水と油の両方の性質を持つリン脂質分子がサンドイッチのように交互に並んで膜になり、幾重にも層のようになってぐるぐると円を描いた形(図、リポソームの構造)になっている。

人間の一つ一つの細胞は、レシチンというリン脂質によって形成された細胞膜に包まれている。細胞膜の中には、細胞核やエネルギー産生工場であるミトコンドリアやゴルジ体などの様々な器官が収まっている。リポソームは、細胞膜と同じ構造を持っているリン脂質製の人工膜と捉えられている。

特徴は、人間の肌上にある表皮の細胞膜と同じ、水分と油分の両方になじみが良いリン脂質の膜がラメラ構造をしているため生体への親和性が高い。特に、層と層の間に化粧成分、医薬成分、栄養素等を含むことが可能で、1ミリの1万分の1くらいの極小カプセルが、肌内にある分解酵素などによって少しずつ溶けて肌の奥深くに美容成分を送り続けることができる。

リポソームは、その形態により
①脂質二分子膜が多重の同心球を形成している多重層リポソーム
②二分子膜単層からなる小さなリポソーム
③二分子膜単層からなる大きなリポソームの3タイプがある。

いずれも、リポソームの内側には水溶性物質を、膜内には油溶性物質を溶かすことができることから、薬物や生理活性物質の理想的な運搬体と考えられてきた。
薬の効果を最大限引き出すために、臓器・組織レベルあるいは細胞の内部まで薬物送達の正確なコントロールを実現する新しいリポソームテクノロジーが必要とされている。

現在、薬物送達システムとしてのリポソームの有用性をより高めるために、高度な機能をもつリポソームとして「温度感受性リポソーム」および「膜融合能をもったリポソーム」の開発と応用研究が盛んになっている。
ある特定の温度において中に閉じ込めた薬物を放出するリポソームを温度感受性リポソームと呼ぶ。特に、体温よりも少し高い温度において薬物を放出する温度感受性リポソームは、体の外からの患部の加温によって、体内の標的部位に選択的に薬物を送達するシステムとして期待されている。

膜融合能をもつリポソームは、細胞膜などと融合することによって内部に封入した物質を効率よく細胞質内に移行させることができる。

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