【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑪防腐剤無添加技術、マンダム新フリー化技術開発(中)
2020.03.19
編集部
化粧品や医薬品は、微生物による汚染を防ぐため、防腐剤が使用されることがある。防腐剤の中でも、パラベンは人体に対する毒性が低く微生物、特にカビや酵母に対して効果的であるために広く使用されている。
パラベンの物質名は『パラヒドロキシ安息香酸エステル』(別名=パラオキシ安息香酸エステル)。パラベンの種類の中で、一般的にメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンが主に使用されている。
化粧品にパラベンを加えることで製品の長期保存が可能になる。1種類のパラベン単独で使用しても十分な効果は得られるが、複数のパラベンや他の防腐剤を組み合わせることで相乗効果が得られ、優れた保存効果を発揮する。
日本では「化粧品基準」によって使用量の上限が1%(100gに対して1.0g)と定められている。しかし、市販されている大半の化粧品は、パラベンを0.1~0.5%の範疇で使用されている。
現在、パラベンは化学合成で作られているが、天然物中にも広く存在している。植物中のパラベンは、ポリフェノール類に分類されるが身近な野菜やフルーツ等の食品にも広く含まれていることが知られている。また、パラベンは、体内に取り込まれると容易に分解されて代謝物に変化して体外に排出される特徴がある。
化粧品に防腐剤を入れない新たな防腐剤フリーの研究も盛ん。こうした研究の中で、株式会社マンダム(大阪府大阪市)の中央研究所は、バラベンに代わる防腐成分の開発やアルカンジオール(保湿性、防腐性を有するジオール化合物の総称)の防腐剤フリー処方の開発等で大きな成果を出している。
同社が取り組んだアルカンジオールの防腐剤フリー処方の開発は、防腐剤が配合された化粧品を使用して不快な皮膚刺激を感じ、まれにアレルギー反応を引き起こす皮膚刺激感受性のある人にもより安全な製品を提供することを目的に防腐剤フリーの研究・開発に取り組んだ。
制汗デオドランド剤等の微生物制御技術の研究する中で、特に保湿剤として汎用されていたアルカンジオールに注目して研究したもの。
実際の研究では、アルカンジオールを含む多価アルコールと防腐剤の抗菌性比較やアルカンジオール配合化粧品とパラベン配合化粧品の防腐力比較、アルカンジオールを配合した化粧品の皮膚刺激性等について取り組んだ。
こうしたアルカンジオールの抗菌性を検証した結果、防腐剤フリー化の処方開発を実現するとともに防腐剤フリーの化粧品の提供に道を開いた。