【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑬美髪技術、花王・日華が髪の空洞補修技術開発(上)

2020.03.25

特集

編集部

髪は人種、年齢、性別などによって多様性に富み、望む髪の状態・悩み・手入れ方法も様々である。化粧品、毛髪各社は、様々な視点から髪の本質を研究し、美しい髪の要素・構造を追求しながら美髪技術の開発に取り組んでいる。

花王株式会社(東京都中央区)は、毛髪の内部組織に作用して空洞を補修する髪の空洞を補修する「空洞補修技術」を開発した。同社が開発した空洞補修技術は、単に空洞を埋めるのではなく、毛髪組織のタンパク質に直接働いて組織を膨潤させ、空洞を少なくする。

特定の有機酸と浸透促進剤の組み合わせを基本構成としてコンディショナーとトリートメントに適用した。後にシャンプーにも適用し、洗いながら空洞を補修する効果を強化した。さらにヘアカラーにも応用し、ダメージを受けた後の即時補修を実現。施術後の毛髪の空洞が減少している様子を電子顕微鏡(写真)で確認した。また、この空洞補修技術によって毛髪1本1本の見え方を改善するだけでなく、毛髪内部の水素結合を強化する効果があることも検証し、洗い流さないトリートメント剤やスタイリング剤にもこの技術を適用できることを実証している。

同社は「空洞補修技術で処理した髪は、処理前に比べて色がクリアで透明感が増し、美しいツヤと奥行き感、コントラストが得られる。カラーリングがベーシックな美容になっている現在、重要な美髪技術である」としている。

化粧品メーカーとしても君臨する化学メーカー日華化学株式会社(福井県福井市)は、黒髪の成分メラニンの減少で生まれる毛髪内の空洞を集中的に補修する技術を開発した。
同社によると「毛髪内の空洞はメラニンクラックと呼び、髪の乾燥や枝毛、艶などが失われる原因となる。開発した毛髪内の空洞を集中的に補修する技術は、空洞に入り込みやすい水道水の金属イオンに反応する成分を化粧品に配合し、必要な箇所だけを補修する。従来製品では、約13%が限界だった空洞の割合を7%程度まで減らせる」と説く。

同社は、黒髪の成分メラニンの減少で生まれる毛髪内の空洞を集中的に補修する技術を駆使してシャンプー、トリートメントに使用したところ「従来に比べてベタ付きが少なくさらさらとした質感になる」ことを実証。新商品としてシャンプー、トリートメント等ブランド「フローディア」を商品化した。すでに国内の美容室向け中心に販売している。フローディアは、同社の化粧品ブランド「デミ」の高価格対ブランドに位置付けている。

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