【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑰セルロースナノファイバー、化粧原料開発(下)

2020.04.21

特集

編集部

現在、セルロースナノファイバー(写真)の実用化に力を入れているのが製紙会社や化粧品原料会社など。
セルロースナノファイバーの利用で期待されているのが、化粧品への使用。王子ホールディングス株式会社(東京都中央区)と原料商社の日光ケミカルズ株式会社(東京都中央区)は、セルロースナノファイバーの共同開発で、化粧原料「アウロ・ヴィスコCS」を開発した。

王子ホールディングスが明らかにしたところによると、同製品は、同じ天然素材由来の増粘剤であるカルボキシメチルセルロースなどに比べて100倍以上の非常に高い粘度でありながら、大きな高粘度状態「チキソ性」(温度が一定のもとでゲルに攪拌、振りまぜ等の応力を加えると粘度が減少してゾル化し、攪拌等をやめるともとのゲルに戻る現象)を示し、べたつかず瑞々しい感触も合わせもつ。また、粒子分散の安定性にも優れるなど「化粧品への幅広い応用が期待出来る」としている。

王子ホールディングスがセルロースナノファイバーを化粧品に応用したのは、セルロースナノファイバーを水に溶かすと2つの特徴が現れ、その特性を化粧品に応用することを見出したことによる。
特性の一つは、粘り気(粘性)で、もう一つが分散(安定性)という特性。セルロースナノファイバーは、濃度が1%以下の時に、何もせずに静止した状態では固形のジェル状だが、それを振ったり圧力を加えたりすると瞬時にサラサラの状態になる。この特性を利用すれば、肌の上でしっかりと吸着するような基礎化粧品ができる。
例えば吹き付けるだけで定着し、しっかりと保湿できるスプレーマスクのような美容マスクも作ることができるなど。新しい製品を生み出すポテンシャルを秘める。
王子ホールディングスは、「アウロ・ヴィスコCS」について2018年4月にオランダのアムステルダムで開催された世界最大級の化粧品原料展でシルバー賞を受賞した。

ともあれ、セルロースナノファイバーは、紙と同じパルプから作られるため、製紙会社中心にセルロースナノファイバーの活用に積極的だ。
日本製紙クレシア株式会社(東京都千代田区)はセルロースナノファイバーを活用して、消臭機能を従来の何倍に高めた大人の紙おむつを開発・販売している。また、中越パルプ工業株式会社(富山県高岡市)や大王製紙株式会社(東京都千代田区)も大学などと共同開発を行っている。

しかし、夢のような素材セルロースナノファイバーだが、現在、化粧品への応用面で更なる技術革新が必要とされ化粧品への応用開発は少ない。また、コストが高いことも課題。今後の普及状況によりコストが改善されることが期待される状況だ。

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