【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑲毛髪染料技術、花王・富士フがレインボー染料開発(中)

2020.04.28

特集

編集部

化粧品企業等が染毛染料の開発に取り組む中で 花王株式会社(東京都中央区)と富士フイルム株式会社(東京都港区)は、非反応型持続性染毛染料「レインボー染料」を共同開発した。
富士フイルムが写真感光材料の研究で培った染料の分子設計・合成技術と花王の毛髪研究で培った毛髪内に浸透する染料をコントロールする技術を融合して開発した。富士フイルムが染料を花王に提供し、花王がヘアカラーリング製品を製造する。

レインボー染料の特徴は、毛髪内部への染料の浸透深度を自在にコントロールして奥行き感のある立体的な発色を実現。同時に、鮮やかな3原色(赤、青、黄)の染料の組み合わせで、幅広い色合いを自在に表現可能。また、染料の分子サイズと電荷制御の独創的な設計により、皮膚には染まらず毛髪は染まり易い特性をもち、高い持続性をあわせもつている。特に、毛髪の動きや光の当たり方に応じて色が鮮やかに変化する独特の見え方を発現させることができるのが最大の特徴。
この染毛染料をヘアカラーリング製品に応用して商品化し、花王が2018年春から欧米市場のヘアサロン向けにヘアカラーリング製品の販売をはじめた。
現在では、ヘアカラーリング商品を日本国内やアジア、欧米等で一般向けに販売するなど「できるだけ早い時期にマス商品に育てていく」方針。

花王のサロン事業は、ヘアサロンを顧客とするB to Bビジネスのサロン事業と消費者向けのマス事業がある。
サロン事業は、欧米が中心。また、マス事業は、プレミアムマス(高価格帯)を主に販売する欧米とボリュームマス(中価格帯)を中心とする日本を含むアジアで展開している。
ところで、花王は、白髪染め「リライズ」を開発し、白髪染めの市場を一気に拡大させたことも記憶に新しい。
リライズの開発は、酒造りの工程で、酒粕に黒い斑点が生じる「黒粕=くろかす」という現象が起こる。同社は、この黒粕に注目し「黒粕の原因である酒粕中のアミノ酸が酸化されてメラニンが生成するという自然現象を、白髪を染める技術に応用することはできないか」と考えたのが開発の契機となった。
「リライズ」は、「植物から抽出した成分を、麹の発酵技術を応用した製法で完成させたのが、“黒髪メラニンのもと(ジヒドロキシインドール)”という100%天然由来の着色成分。リライズはこの着色料のみで黒色に染めている。
麹の発酵技術を応用した製法で作り出した黒髪メラニンのもとを髪の表面に定着させ、黒髪色を取り戻すという仕組み。しかも、繰り返し使うことで髪色が徐々に黒くなり、自然に染まるというのがミソ。
引き続き、花王の染色開発に目が離せない。

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