【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目㉖紫外線カット処方技術(下)~ ロート、サンスター新処方、新素材を開発~

2020.06.24

特集

編集部

ロート製薬株式会社(大阪府大阪市)は、紫外線カット効果と使用感の両立をめざした研究を行い、同じ量の紫外線カット成分で、日やけ止め効果を高める「SPFブースト処方」技術を開発した。
一般的に紫外線カット力を高めるためには、紫外線カット成分の量を多く配合する必要がある。しかし、紫外線カット成分を増量すると使用感が悪くなるため「高い紫外線カット力」と「使用感の良さ」を実現する事は非常に難しいとされていた。開発した技術は、日やけ止めブランドに応用し商品開発に繋げる方針。

SPFブースト処方は、紫外線カット成分と「しあがり均一シルキー ワックス」を組合せたもので、紫外線カット成分の量を増やすことなく紫外線カット力を高めることができる。
SPFブースト処方の効果について同社が行った実験では、紫外線カット力を一般的な日やけ止め処方と比較したところ「SPFブースト処方では、紫外線吸収能力を約1.3倍に増強させることを確認した」という。

通常、紫外線カット成分は油性のものが多く、日やけ止め製剤の効果を高めるために多く配合するとべたつき等の使用感が悪くなることが課題。
新処方では「しあがり均一シルキーワックス」を配合することで、紫外線カット成分の周りに被膜が形成されるため、製剤を薄く均一に肌に塗ることができること。さらに日やけ止め特有のべたつきを抑えることができるなど「効果」と「使用感」の両立を可能とする処方を実現した。

同社がSPFブースト処方を開発した背景には、紫外線対策に対する意識の高まりで、SPF50+/PA++++という高い紫外線カット力を持ちながら気持ちよく使える日やけ止めに対するニーズが高まってきたことによる。

歯磨きから化粧事業に力を入れるサンスター株式会社(大阪府高槻市)は、堺化学工業株式会社(大阪府堺市)と共同で近赤外線カット効果が高い新素材「光プロテクトシールド」(写真・六角板状酸化亜鉛)を開発した。両社は現在、スキンケア用途での実用化に取り組んでいる。
光プロテクトシールドは、堺化学が開発・販売している機能性粉体。両社は、六角板状酸化亜鉛の中でも特に近赤外線カット効果の高い粒子サイズに着目した。

その結果、ケラチン(ヒトの毛髪や皮膚の角質層に含まれる繊維状タンパク質)で表面処理を施すことにより、従来の六角板状酸化亜鉛よりも近赤外線、ブルーライトを含む可視光をカットする効果が高められることを確認した。さらに、この新素材「光プロテクトシールド」を日焼け止め製剤(SPF50、PA++++)に配合すると配合しないときと比べて約5倍の近赤外線カット効果(800nm~71400nmの平均遮断率)を示した。

共同開発した新素材は、広い領域の太陽光線による光老化を防ぐ可能性が強く肌の健康維持に有効な材料として期待される。

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