【連載】この中小化粧品会社に注目㉖スパーティー(上)~OEⅯ先企業の無許可製造で事業頓挫~
2020.11.24
編集部
独創的なアイデアで新技術や新製品、新サービスを開発し、たちどころに市場を制覇して株式公開を実現するベンチャーの創出がコスメ業界でも散見されるようになった。化粧品の販売において代理店や小売店を介さず自社の電子商取引(EⅭ)サイトを通じて直接、顧客に販売する米国仕立ての「ダイレクトツーコスメ」(D to Ⅽ)の事業手法は、コスメ関連のベンチャー企業にとって事業を成長軌道に乗せる千歳一隅のチャンスとして注目されている。
しかし、企業経営は、いつ時、大きな落とし穴にはまるかわからない。とりわけ人、モノ(技術、製品等)、金といった経営資源を持たない新興企業のベンチャーにとっては、販売不振などから道半ばで経営破綻にあえぐケースが多い。
そうした中、博報堂出身のサラリーマンらが立ち上げたD to Ⅽベンチャー企業「株式会社スパーティー」(東京都渋谷区、2017年7月設立)は、取引先のOEⅯ(相手先企業ブランド)企業の無許可製造が発覚して商品回収と新たな製造元探しに追われるなど危機に直面した。
同社は、2018年5月に一人ひとりの髪質や好みに合うよう処方をカスタマイズしてつくるパーソナライズシャンプーブランド「メデュラ」を立ち上げ日本初の定期配送型商品として直接顧客に販売するD to Ⅽに乗り出した。
メデュラは、公式サイト上で、髪質や好みの仕上がり、香りなど7つの質問に回答するだけで、100種類以上の処方から、その人に合ったシャンプー&リペア(トリートメント)が提示される。注文ごとに1本ずつ成分をブレンドして作り、1~2週間で自宅へ配送するというオーダーメイド商品。解約されない限り、シャンプーとリペア各1本をセットにして定期配送する仕組み。
ところが「スタートして4カ月間で月商1400万円を達成」という好スタートを切ったものの東京都の担当者から呼ばれてOEⅯ先の許可書偽造で無許可製造が発覚。既存客への返送と新たな製造工場の確保に追われるなど暗礁に乗り上げた。
幸い、OEⅯ会社で投資事業にも乗り出している株式会社サティス製薬(埼玉県吉川市)が製造を引き受けてくれたことで、同年12月から既存客への配送を再開し、難局を乗り越えた。 「事業に不祥事はつきもの」とはいえ、起業して日が浅いベンチャーやユニコン企業にとってちょっとした不祥事でも傷が深くなる。
同社の事例は、D to Ⅽ事業に乗り出す多くの中小・ベンチャー企業に多くの教訓を与える動きといえる。