【連載】この中小化粧品会社に注目(62)アルマード(下)~卵殻膜研究で多数の特許を取得~

2021.06.1

特集

編集部

アルマードは、法人設立当初から卵殻膜原料についての製造技術研究を進めてきた。卵殻膜とは、鶏卵の殻の内側にある薄い膜のこと。18種類のアミノ酸、プロテオグリカン、ヒアルロン酸等で構成され、美容・健康成分が含まれている。膜の厚さは0.07mmと極薄にも関わらず菌や、菌やウイルス等から卵の中のヒナを守り誕生までを導く発育器の役割も果たす。21日間のうちに100億個もの細胞を生み出す驚異の力を秘めた天然素材といえる。

同社が卵殻膜の研究開発を本格化させたのは2007年4月に国立大学法人東京大学(東京都文京区)と株式会社三井住友銀行(大阪府大阪市)が推進する中小・ベンチャー企業向け産学連携プログラム「PROPRIUS21」の共同研究1号案件に採択され、東京大学と共同研究契約を交わしたことを契機に研究を加速させた。

卵角膜が健康や美容への効能を期待されながらも、実用化が難しかった中で、東京大学との共同研究では、卵殻膜塗布と摂取の両側面から、有用性とメカニズムの検証による解明を進めた。共同研究の中で、美容と健康について明らかになったのは、卵殻膜が若々しい肌と健康維持に必要なⅢ型コラーゲンの発現料の増加を促すことを発見した。
この研究成果については、2007年に世界的科学専門誌「Cell & TissueResearch」に掲載されたことで、卵殻膜研究において国際的な評価を確立した。

以来、同社は、アルマードの卵殻膜素材について1年ごとに改良を重ねた。例えば、肌への刺激や臭気を年々弱める一方、原料から抽出される単位あたりのアミノ酸量を増加させるなどの改良を図った。
最近の卵殻膜研究では、創傷治癒の早期化に加えて皮膚の弾力性増加、肝機能の改善への有用性も確認。難病指定されている潰瘍性大腸炎の改善にも有効であるという研究結果を2017年3月に米科学誌「Scientific
Reports」で発表した。

同社は、創業して21年間にわたり蓄積してきた卵殻膜に関する技術・知見の一部を特許として出願し、多くの卵殻膜関連特許を保有している。2019年7月には、新たに簡便かつ効率的に卵殻膜を採取できる卵殻膜原料の製造方法について特許を取得した。
卵殻膜は昨今、美容成分として化粧品に配合される一方、医薬分野でのニーズが高まっている。海外では、人工皮膚への応用研究が推進される動きにある。しかし、卵角膜の事業化については、国内企業を含め新規参入が相次いでいる。

こうした過当競争の中で同社は、先行き、いかに市場での占有率を高め、成長の構図を具現化するか、上場後の展開が注目される。

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