(83)ホシケミカルズ/上 ~事業承継のモデルとして注目~
2021.09.28
編集部
産業界で「中小企業の会社生存30年説」による後継者難が大きな問題になっている中で、1975 年4月に化粧品、医薬品、健康食品の原料を扱う商社として創業したホシケミカルズ(東京都千代田区)は、代表権のある会長と社長が事業を承継して経営を成長軌道に乗せるなど“事業承継のモデル〟として注目されている。
同社は、2019年7月に代表取締役社長の川島勝郎氏が退任し、相談役に就任。新社長に同社のグループ会社でペット事業(ホテル・トリミング)を展開するベルシアンの星野拓代表取締役が就任する人事を行った。
同社の事業承継問題は、今度の人事で相談役に就いた非親族の川島勝郎氏(前代表取締役社長、2006年社長就任)の功績に負うところが大きい。
現相談役で前社長の川島勝郎氏は、1978 年に友人の間柄にあった同社の代表取締役前会長星野恒夫氏(創業者星野磊氏の長男)に誘われて入社した。
入社後は、内部の組織や財務面、海外貿易等を前会長が担当。営業面を前社長の川島氏が担当するなど役割を分担した。前社長の川島氏は、創業者一族ではないものの、対外的には同社の顔となり、取引先との関係を築くなどして営業を総括した。
同社は、2005年4月に、グループの経営体制を構築するため、会長制度を導入、星野恒夫氏が代表取締約会長に就任、営業を統括していた川島氏が52 歳で代表取締役社長に就任し新体制に移行した。
新体制移行後は、前会長と非親族の川島前社長が事業承継を契機に一体となって人材育成を含めた営業力強化、化粧品容器の海外生産、研究開発部門の集約、持ち株会社の設立によるグループ力の強化など組織体制の整備を行った。
同社の事業承継のポイントは、創業者の下で会社を支えた長男(会長)とその友人川島氏(前社長)の二人で役割分担し、事業を承継し経営改革を推し進めた点にある。
特に、創業者と前社長川島氏との関係において事業承継形態は「非親族承継」で、創業者の事業を踏襲しながら経営の改革を推し進めた「踏襲型承継」「経営革新承継」に承継の特徴がある。