連載・新興市場上場の美容業界各社の経営・事業動向に迫る最終回:ユーグレナ、ミドリムシ大量培養技術開発、市場創出(中)

2014.11.12

特集

編集部

ミドリムシ培養微細藻「ミドリムシ」(学名ユーグレナ)の大量培養技術(写真)を開発し化粧品やサプリメントの原料、商品化に成功した株式会社ユーグレナ(東京都文京区)も成長の軌道に乗せたモデル企業といえる。体内の緑葉体によって光合成を行う単細胞生物の藻の一種「ミドリムシ」は、人間が必要とする栄養素のほとんどを含むといわれ、今日においてその有効活用と自ら切り開いた市場創出は賞賛に値する。

一般人には聞き及ぶことがなかったこの「ミドリムシ」の事業化は、2005年8月に東大発ベンチャーとして3人でスタート(法人化)したのが起源。しかし、事業を立ち上げたばかりの同社もベンチャー共通の課題である研究開発、事業化の資金調達に遭遇。多額の資金なくして研究開発を進め、事業化を実現することはできなかった。
そんな中、2009年12月に独立行政法人中小企業基盤整備機構(東京都港区)が出資し、ベンチャーキャピタル(VC・投資会社)のインスパイア・インベストメントが運営する投資ファンド「インスパイア・テクノロジー・イノベーション・ファンド投資事業有限責任組合」(中小企業基盤整備機構がファンド総額26億4,000万円のうち、50%の13億2,000万円を出資)から投資を受けて資金調達を実現。この資金を糧に事業を軌道に乗せ、2012年、マザーズ市場に上場した。

現在同社は、ミドリムシを利用したヘルスケア事業とエネルギー・環境事業を2本柱に事業を展開。今年3月に同社初のドリムシから抽出した成分配合の自社ブランド化粧品を市場に投入している。
同社の足元の業績(2014年9月期)は、ミドリムシ配合の青汁(サプリメント)やヨーグルトなどのヘルスケア事業(直販)について前期に引き続いて広告宣伝活動による認知度向上、同社サイトへの顧客数と定期購入者の増加などが奏功して売上高は、前期比約5割増の31億1,300万円と大幅に増加する。また、エネルギー・環境事業では、5年後の2020年を目処に「ミドリムシバイオジェット燃料」を実用化する方針で、利益のほとんどをミドリムシバイオジェット燃料の研究開発に注ぎ込むなど研究開発投資は旺盛。
現在、同社の業種は、食品業に分類されている。今後、化粧品を含むヘルスケア事業で収益を上げ、ミドリムシバイオジェット燃料の研究開発に振り向けながら実用化した場合、エネルギー・環境企業に大きく変貌する可能性が高い。

同社は、すでにJX日鉱日石エネルギー株式会社(東京都千代田区)、株式会社日立プラントテクノロジー(2013年4月に株式会社日立製作所に吸収合併)の2社と、ミドリムシからジェット機の燃料を製造する技術開発に本格的に取り組んでいる。ミドリムシから作り出す油がジェット燃料に近いことから共同開発(2010年)しているもので、2018年度の事業化を目指している。また、いすゞ自動車株式会社(東京都品川区)と自動車のバイオディーゼル燃料開発に取り組むなど拍車をかけている。今後、ミドリムシバイオジェット燃料の実用化を前提に考えると同社の業種、業態は、エネルギー・環境事業を行う企業へと大きく変貌して行く公算が強い。

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