連載・異業種から化粧品分野に新規参入した上場各社の化粧品事業に迫る【9】江崎グリコ「自発保水」の保湿成分開発(中)

2015.01.14

特集

編集部

江崎グリコは、化粧品原料α-アルブチンがメラニンの生成を強力に抑制する効果があることをスイスのペンタファーム(現DSMニュートリショナルプロダクツ)と共同で発見。独自に開発した酵素合成法によりα-アルブチンの量産化に世界で初めて成功した。これに続いて2004年に世界で初めて工業レベルでグリコーゲンを酵素によって合成することに成功した。健康科学研究所のコアコンピタンスである 「 糖質加工技術 」 や 「 酵素利用技術 」 を活用して「EAPグリコーゲン」(酵素合成グリコーゲン)を開発し、保湿効果を実証している。

酵素合成グリコーゲンは、植物澱粉を原料に同社が開発した独自の酵素群を作用させて生化学的に合成したバイオグリコーゲン。
バイオグリコーゲンの粒子径は、20~60ナノメートルの球状ナノ分子で、独自の酵素製法により高純度でかつ均一な分子サイズに設計することができる。また、天然のグリコーゲンと同じ構造をしており角層にうるおいを与える「自発保水」(酵素合成グリコーゲンを肌の角質内の奥まで浸透させて潤いを維持する新しい発想のスキンケア)が特徴。

バイオグリコーゲンを用いた表皮細胞での効能試験では、バイオグリコーゲンをヒト表皮ケラチノサイトに作用させると、ケラチノサイトのアデノシン三リン酸(ATP)の産生量が増加。また、バイオグリコーゲンの添加によって保湿成分として知られるヒアルロン酸の産生を促す効果を実証した(ATPとヒアルロン酸の産生促進の図参照)。同時に、3次元表皮モデルに酵素合成グリコーゲンを塗り24時間後に酵素合成グリコーゲンの存在位置を観察したところ角層深くまで浸透していることを確認している。
さらに、酵素合成グリコーゲンを配合したローションをヒトの肌に直接、塗布し1ヵ月後の角質水分量を測定する実験を行った。その結果、肌の角質水分量が使用前と比べて20%増加するなど保湿効果を実証している。

江崎グリコ、バイオグリコーゲンATP産生グラフ

こうした健康科学研究所の酵素合成グリコーゲンの開発と保湿効果の実証によってグリコーゲンの活用は、健康領域や美容領域へ急速に拡大。特に、酵素合成グリコーゲンは、安定した生産が可能(2008年酵素合成グリコーゲンの製法特許取得)なことから、肌領域での活用が今後、さらに進むものとみられる。

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