【連載】幹細胞化粧品開発元年【5】資生堂、肌の自己再生力を高めるコラーゲン産生技術を開発(上)

2015.09.24

特集

編集部

真皮幹細胞資生堂は、コラーゲンを生み出す真皮幹細胞(写真)への対応とヒアルロン酸を生み出す表皮幹細胞への対応を合わせた「W幹細胞技術」を確立し、同技術を応用して開発したスキンケア化粧品を今秋にも市場に投入する。

同社が加齢とともに減少する肌のコラーゲンに着目して研究に着手したのは今から32年前の1983年になる。中でも同社が注目したのは、Ⅰ型、Ⅳ型、Ⅶ型(吊型コラーゲン)の3つのコラーゲン。

コラーゲン研究においてこれら3つのコラーゲンは「肌のハリや弾力を保つために必要不可欠なもの」で、表皮と真皮の境に存在している基底膜付近に正しい構造で存在していることを突き止めた。

3つのコラーゲンの中で、2013年にⅦ型コラーゲン(吊型コラーゲン)の再生に成功している。三次元培養皮膚モデルを用いて研究を進めたところ、吊り型コラーゲン分解酵素とエイジング酵素の2つの酵素のはたらきを同時に抑えることで、吊り型コラーゲンの再生に繋げた。また、体の中にコラーゲンをつくる線維芽細胞が存在し、その働きや肌変化のメカニズムなどの研究に取り組んだ。

その結果、線維芽細胞は年齢を重ねるごとにコラーゲンを生み出す力が弱くなり、肌のハリが保ちにくい状態になることが明らかになった。
さらに、こうした肌変化のメカニズム解明に取り組み、線維芽細胞のマザー細胞とも言える「真皮幹細胞」にたどり着いた。
この真皮幹細胞へ効果的にアプローチすることで線芽細胞を元気にし、良質なコラーゲンをつくり続けられることを確認した。

同社が2004年から本格的に取り組んだ皮膚の再生・修復と密接に関係している真皮幹細胞(真皮に存在する間葉系幹細胞)の研究では ①真皮幹細胞は、血管周囲を居場所とすること ②真皮幹細胞は加齢で減少すること ③真皮幹細胞を血管周囲に安定的に存在させる成長因子(DGF-BB)の発現を高める成分「イノシトール」の開発を実現した。

幹細胞とは多様な細胞を生み出す能力のある細胞のことであり、幹細胞から新しく生まれ分化した細胞は、幹細胞として留まるか、固有の機能を持つ細胞へと変化する。皮膚にも幹細胞は存在し、他社の研究機関においても表皮や毛包、色素細胞について解明が進んでいる。

そうした中、同社が肌の自己再生力を高める司令塔の真皮幹細胞に着目し、特殊なレーザーを使って肌の奥にあるコラーゲンを画像化して紫外線で肌あれ状態を可視化できる技術の開発やⅦ型コラーゲンの再生、皮膚におけるコラーゲン分布・特性を解明し、米国皮膚科学会で発表(2012年)するなど肌の自己再生力を高めるコラーゲン産生技術の開発やコラーゲンを生み出す真皮幹細胞に着目したスキンケア技術の開発(2014年)にメドをつけたことは、極めて注目に値する。

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