【連載】再生医療ビジネスが勃興(2)再生医療ビジネスが勃興
2013.05.1
編集部
再生医療機器分野に80社参入
細胞シートやiPS細胞などの再生医療製品に欠かせないのが培養、検査、品質評価などに使われる再生医療機器。ここへきてiPS細胞や細胞シートの勃興を起爆剤にして医療機器、電機・電子,光学機器、バイオベンチャーを中心になだれ込んできた。また、細胞加工施設の運営管理を支援するサービス提供事業者も現れるなど一挙に過熱化の様相を呈してきた。
iPS細胞や細胞シートなど細胞の取り出しから分離、増幅・分化、安全性評価などに至る一連のプロセスにおいて多様な再生医療機器・装置が使われる。
再生医療機器・装置は、人工関節や人工心臓などの生体機能・補助代行機器を指し、カテールや注射器、画像診断装置などの処理用機器(医療機器)と棲み分けされる。
iPS細胞や細胞シートに使われる主な再生医療機器には、組織分取用機器、細胞を分離する遠心分離機器、細胞培養機器、タンパク質構造解析機器、細胞評価機器、器具・器材などがある。今度の薬事法の改正では、再生医療製品と同様に再生医療機器の安全性評価と承認(医薬品医療機器総合機構)が盛り込まれた。
再生医療製品と同様に、承認審査手続きを簡素化してスピードアップを図るほか生命に直結する新たな機器を重点に審査する医薬品医療機器総合機構が一定の安全性を認めれば条件付きで承認する。
ここへきて電機・電子機器や医療機器メーカーなどを中心に今国会で成立する薬事法の抜本改正を見越して開発・販売に乗り出す動きが顕著になるなど俄かに騒然としてきた。
日立は、東京女子医大と共同で角膜、食道などの再生細胞シート自動培養装置を開発した。すでに、細胞培養シートを専門に販売する組織「ナノプリントソリューションセンタ」を立ち上げ子会社の日立ハイテクノロジーズと共同で拡販に入っている。
ソニーや古河電工は、細胞の大きさや形状、特徴を計測して目的の細胞を回収する装置「セルソーター」を開発し販売を始めている。米国の医療機器、バイオベンチャーを買収し業務提携を取り交わすなどして参入する企業も目立つ。
テルモは、細胞培養や遠心分離の技術を生かし骨髄液を幹細胞と血漿に分離する小型遠心分離機を開発し国内外で販売を始めた。米国市場では、買収した医療機ベンチャーのハーベストテクノロジーズ社を中軸に販売を強化。また、ハーベストテクノロジーズ社で心臓機能の再生について臨床試験を開始、今年度中に販売認可の取得を目指す。
細胞シートを重ねて心筋を再生する再生医療製品開発に取り組む旭化成は、米バイオベンチャー米ゾ―ルメディカル社と自動体外式徐細胞器の国内での独占販売契約(2011年8月)を締結、救命緊急医療分野に参入した。また、テラ(ジャスダック上場)と業務提携(2011年9月)してがん治療を目的とした細胞・再生医療分野に新規参入した。現在、細胞加工装置や骨髄から幹細胞を効率よく抽出する細胞分離装置などの開発強化に取り組んでいる。同社は、2015年度までに細胞培養、分離精製、保存、細胞医療支援サービス領域の技術開発に力を入れ細胞再生医療事業を2100億円に持って行く計画。
帝人は、総合力を生かして再生医療製品や再生医療機器、三次元組織修復材,器材の開発などを強化。2020年までに200億円の売り上げを目指す。
オリンパス工業は、米サイトリア社と合弁会社を設立(2005年)し、脂肪由来の細胞群分離装置を開発・販売。また、2011年に骨の再生を促進する骨形成タンパク質を実用化し国内外で販売している。
旭化成と業務提携しているテラやメディアネット(東証マザーズ上場)は、細胞由来の再生医療に関する技術・運用ノウハウのサービス提供、細胞加工施設(CPC)の運用管理に係るコンサル業務に乗り出す動きも見られる。
パナソニックヘルスケアは、医薬品や化粧品などに適用される製造・品質管理に関する適正製造基準(GMP)の国際化に照準を合わせた医療施設の受託開発を強化している。
このように細胞シートやiPS細胞などの再生医療品を検査する再生医療機器に参入した主要な企業は現在、約80社に達した。