【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【49】アプロサイエンス① ~タンパク質を調べる技術を化粧品開発に生かす~

2017.02.7

特集

編集部

株式会社アプロサイエンス(徳島県鳴門市、社長 金敦祚氏)は、1990年に新規たんぱく質の探索やたんぱく質の構造解析に関わる技術開発等を目的に設立したバイオベンチャー。

創業当初は、医薬品メーカーや大学研究者向けのタンパク質の受託分析事業から出発し、遺伝子分析や試薬・機器販売にも進出。また、タンパク質技術を活用した化粧品を全国の取引先店舗で販売するなど、年々、事業領域を拡大してきた。

現在の事業内容は、たんぱく質の構造と機能を対象としたプロテオーム解析受託サービスをはじめ、研究用試薬製造販売、化粧品製造販売、タンパク質機能開発研究(製品開発研究)など。

現在、アプロサイエンスの成長を牽引しているのが、遺伝子組み換えよりも正確に生物の遺伝子を操作できる「ゲノム編集」技術。

ゲノム編集とは、遺伝情報を高い精度で改変する技術で、DNA(デオキシリボ核酸)切断酵素である人工ヌクレアーゼ(DNA鎖の任意の配列を認識して切断するよう人工的に改変された制限酵素)を用い、ゲノム上で特定のDNA塩基配列を標的とした遺伝子改変技術。

同社は、1995年よりタンパク質の1次構造解析サービスの発売を契機に、タンパク質基礎研究分野に市場参入。これまで、N末端アミノ酸解析やLC-MS/MSによるタンパク質同定など研究者向けのサービスを開発。2013年には、米国トランスポサージン・バイオパーマシューティカルと提携してゲノム編集の技術導入を図り、2013年から国内研究機関向け等に本格サービスを始めた。

タンパク質基礎研究分野へ参入した当時は、ガンなどに関係するタンパク質のアミノ配列を決定し、年間100個以上の新規タンパク質を発見していた。一方で、たんぱく質の技術の特長を生かした化粧品の開発に食指を伸ばした。

「肌はタンパク質でできている。シミやシワといった肌トラブルの原因もタンパク質が関係していることは分かっていた。そこで、肌にとって何が本当に必要かと考えたとき、タンパク質をケアする化粧品が開発できれば世界中の女性の喜びに役立てることができるのではないか、と考え、本格的に開発に入った」―。いわば、同社の専門であるタンパク質を調べる技術が化粧品に生かせる技術だった。

傷んだ細胞を修復し、元気な細胞に戻す働きを持つタンパク質「ヒートショックプロテイン」(HSP)が肌にとって非常に重要な役割を担っていることに着目。
そうした中から2007年10月に自社ブランド化粧品「ラジカルサイファー」(写真)を開発し、通販市場で販売を始めた。現在では、代理店を介して専門店、量販店など約1000件の店舗で販売している。

#

↑