ナノエッグ、ナノカプセル・DDS技術で機能性化粧品開発(上)

2017.06.22

特集

編集部

株式会社ナノエッグ(東京都港区)は、化合物(薬効成分)のレチノイン酸(ビタミンA活性体)などをナノスケール(直径15~20ナノ㍍)サイズで、薄膜状の炭酸カルシウムでコーティングした無機質のナノカプセル化技術(ナノエッグ技術と称す)と、高分子量の薬物や水溶性薬物の高効率な経皮吸収を可能とするジェル状外用基剤「ナノキューブ」(登録商標)を使った新規経皮伝達システム(ドラッグデリバリーシステム=DDS)を得意とする聖マリアンナ医科大発ベンチャー。

同社が得意とするナノカプセル化技術は、薬物を含む相を合成高分子や天然高分子の皮膜で覆い、局所での薬物の持続的放出や組織標的化を狙うDDS技術。

一般に、粒子径が数10nm(1nm:10億分の1m)ほどの球状製剤をナノカプセルと呼ぶ。同社が開発したナノカプセル化技術は、炭酸塩という無機質コートを採用。薬物包接濃度が99%と高く生体適合性に優れ、生産上のメリットが高い点が他のカプセル化技術との相違点。すでに、皮膚再生の治療薬成分として知られるレチノイン酸(ビタミンAの生理活性体)のナノカプセル化を実現している。

ナノカプセル化技術は、レチノイン酸などの薬効成分を100%閉じ込めて細胞に効率よく浸透(ドラッグ・デリバリーシステム)させる特徴を持つ。また、ナノキューブは、肌本来の自己治癒力を引き出す特徴があり、皮膚表皮細胞の基底細胞の増殖と分化を促進し、皮膚の再生作用を促す。また、皮膚ホメオスタシス機能のスイッチを入れ、薬剤の経皮吸収性をも向上させる特殊ジェルのナノキューブは、皮膚組織細胞だけでなく毛母細胞(表皮細胞由来)の増殖・分化能も有することを見出した。さらに、同ジェルは、育毛効果を示す薬剤のナノレベル包接が可能で、毛根経由の薬剤吸収向上が期待される。これを活用して短期間で育毛を示す効果的脱毛症治療剤(医薬部外品)の開発を実現している。

こうした得意技術を収益面に反映させるため、法人設立後の早い段階からナノカプセル化技術を製薬企業に、ナノキューブ技術をエステ大手TBCグループや化粧品会社などに供与し、共同研究開発費やマイルストーン(研究開発の進捗に応じて支払われる成功報酬)、ロイヤルティー収入などを獲得した。

現在、アンチエイジングやメタボリックシンドローム関連、将来的には糖尿病や変形性関節症の治療薬への拡大をめざして研究に取り組む。

同社は、これまで聖マリアンナ医科大学内にあった研究機関を2017年4月に新設した「先端医薬・ヘルスケア研究所」(写真・川崎市のナノ医療イノベーションセンター内)に移転した。新研究所を新設したのは、皮膚疾患などの新たな研究領域の拡大及び研究開発のスピードを速める狙い。

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