【連載】大手化粧品会社の研究⑪ホーユーの会社研究 ~産学連携、イノベーション施設等でアレルギー研究を強化~(下)

2018.03.15

特集

編集部

ホーユーは、創業以来(1905年)、ヘアカラーを中心とした商品やサービスを通じて美を創造し提供してきた。そうした中で同社は、国民の健康で文化的な生活に寄与することを目的に一般財団法人「ホーユー科学財団」(愛知県名古屋市、2014年4月)を設立した。

同財団が行う事業活動で中心を成している事業が研究開発に関わる助成事業。研究助成の対象は、国内の国立・私立大学または国公立研究機関に所属する研究者が取り組んでいる毛髪、皮膚、薬理、染色化学等に対する研究テーマを公募・審査して助成するもの。1件当たりの助成額は、50万円から100万円。2015年度から助成金の交付を開始。以降、2018年度現在まで年間平均約11件を選んで助成金を交付している。

このような外部機関との研究開発に関しては、藤田保健衛生大学との産学連携の推進や総合研究所内に新たにイノベーションセンター(写真)を設立(2016年11月)するなどして、ヘアカラーや白髪染めなど染毛剤が起こす可能性のあるアレルギー性接触皮膚炎の原因物質などの取り組みに見られる。

同社は、2015年4月に藤田保健衛生大学に寄附講座として「アレルギー疾患対策医療学講座」を開設するとともに、アレルギー診断の精度向上に向けさらなる研究推進を目的にイノベーションセンターを建設した。

藤田保健衛生大学との産学連携で開発されたものとして、プロテオミクス(生物の重要な構成要素であるタンパク質の構造や機能を総合的に解析する技術)の独自技術を見出すことによりタンパク質解析の高性能化を実現した。
タンパク質解析技術は、日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」、厚生労働科学研究補助金・日本医療研究開発機構(AMED)による研究の中で活用され、発症機序の解明や通常のコムギアレルギーとの違いの診断などに貢献している。また、Ⅰ型アレルギー(食物アレルギーや花粉症に代表されるアレルギー)の原因抗原タンパク質の特定に有効な技術であることが見いだされ、アレルギー診断技術の向上に期待が高まっている。

同社は、2017年に総合研究所東京ラボを開設するなどして産学連携による毛髪剤の安全性の探求や製品開発を強化するなどアレルギー研究を促進している。

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