美容事件(上) 茶のしずく石鹸アレルギー被害

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2014.01.23

編集部

事件は、「茶のしずく石鹸」を使用した消費者が小麦アレルギーを発症したという全国規模の健康被害である。訴えられたのは製造・販売業者の株式会社「悠香」(本社・福岡県大野城市)とフェニックス、片山化学工業研究所である。

茶のしずく石けん美肌を目的にしたこの石鹸には加水分解小麦末(グルパール19S)が含まれ、これが皮膚や粘膜に浸透して体内に蓄積されて小麦アレルギー症状を発症、まぶたや顔が腫れたり、かゆみを伴う発疹ができる症状が発生した。時にはアナフィラキシー・ショック(強いアレルギー反応)のため救急車で搬送されたり、血圧低下、意識障害、胃腸障害という重篤な症状を起こした被害者も多い。小麦アレルギーを発症すると、小麦を含む食品を摂取できなくなるし、家族も小麦なしの食事を強いられて一緒に摂る場合が多く、食生活が一変する。加水分解小麦末は昔からアレルギー症状を起こすと言われ、化粧品会社は慎重な対応をしてきたが、東京弁護団によると、「悠香」は「泡立ちがよく保湿性がある」として大量に石鹸に入れた結果、被害が多発したと考えられる。全国のアレルギー専門医による治療・研究でも治癒の知見は確立されていない深刻な問題となっている。

「悠香」の医薬品医療機器総合機構への報告(平成25年5月)によると、顧客から診断書等により得られた症例は2,851件、そのうち医師による確実例として診断されたのは1,435件に上った。全国に約3,000人の被害者が存在することになる。被害者の95%が女性で20代から70代まで及んでいる。

茶のしずく石鹸被害者救済東京弁護団(神山美智子団長、中村忠史事務局長)によると、全国一斉提訴は平成24年4月15日で、今年1月現在、各地で提訴した原告は1,330人以上に達した。損害請求総額は178億円。東京地裁では、3年以内に結審して判決(平成27年春)を行う日程が組まれ、時機を見て和解手続きを行う進行となっている。

東京では平成25年12月に第5次の提訴があり、原告は167名になった。東京地裁訴訟では現在、茶のしずく石鹸は欠陥商品なのかどうか、悠香に責任はあるのかないのかという責任論の審理を終え、第2段階の損害請求の損害論の審理に入っている。東京弁護団は被害者に対し、1人1,500万円~1,000万円の製造物責任法に基づく損害賠償を請求している。

茶のしずく石鹸は薬事法上の医薬部外品として厚生労働大臣の承認を経て製造販売されている。しかし、承認手続の段階で安全性が確保されるようなシステムになっていなかった。厚労省は平成22年10月段階で健康被害が発生していることを知り、製造業者に注意喚起しておきながら「悠香」にはリコール措置を行うよう命令せず、消費者庁に対する事故報告も怠った。消費者庁が国民に注意喚起したのは平成23年6月になってしまった。

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