テラ、樹状細胞ワクチンを「細胞医薬品」に実用化し製造承認目指す
2013.11.13
編集部
医薬品開発ベンチャーのテラは、2014年度中に細胞医薬品の臨床(治験)試験申請に踏み切る。現在、九州大学と共同で取り組んでいる製造効率が従来比200倍以上に高まる樹状細胞ワクチンの量産化や注射剤に加工して細胞医薬品として供給する事業化にメドをつけて治験申請する。これを踏まえて樹状細胞ワクチンを細胞医薬品として薬事承認を受け早期の製造承認を目指す。
樹木が枝を広げる形をした血液中の樹状細胞は、抗原提示細胞と呼ばれ、体内に侵入してきた細菌などの異物を抗原(がんの目印)として自己の細胞表面上に提示し、免疫細胞(T細胞・リンパ球)にがんの存在を伝達してがん攻撃を行う司令塔の役割を担う。特に、樹状細胞の抗原提示能力は、同じ抗原提示細胞のマクロファ―ジに比べて100倍高く樹状細胞の能力、機能を活用してがんワクチンに応用した。
同社は、すでに提携医療機関に対して樹状細胞ワクチンの技術を供与し、提携医療機関で、がん患者を対象に臨床試験(2週間に1回のペースで計5~7回、ワクチンを注射)を始めている。通院で治療できすでに累計症例数は、約7,000症例にのぼる。しかし、樹状細胞ワクチンを高品質に大量生産し、安定供給することが課題となっていた。
このため同社は、九州大学大学院薬学研究院米滿吉和教授らの研究グループと今年4月に共同研究契約を締結。現在、共同で特許出願(2010年5月)した樹状細胞の培養増幅技術を駆使して末梢血単核球(血液中のリンパ球と単球の総称)から安定した品質の細胞を量産化し、樹状細胞ワクチンの治験薬に準拠した細胞医薬品製造のためのフィージビリティスタディ(予備試験)に取り組んでいる。予備試験は、GMP(製造・品質管理基準)に適合した樹状細胞ワクチンの治験薬としての文書体系や製造体制の構築、全製造工程の実地検証(製造テストラン)など。
同社では、こうした樹状細胞ワクチンの量産化や注射剤に加工して細胞医薬品として供給する事業化にメドをつけて2014年度中に治験申請する。また、樹状細胞ワクチンを細胞医薬品として実用化し、供給するためには薬事法の承認が必要になる。
現在、臨時国会で審議されている薬事法改正は、再生医療製品や樹状細胞ワクチンの審査・承認手続きを簡素化するもので、成立する公算が強い。同社は「薬事法の対象として認められれば医薬品として実用化できるようになる。治験申請を踏まえて早期に製造承認を得る計画」とし期待を込める。
細胞医薬品としての樹状細胞ワクチンは がん患者の細胞を培養して作る新しい概念の医薬品。骨髄移植後の重病など免疫に関する病気の治療に活用することが期待されており医薬品として供給できるようになれば多くの患者が治療を受けられるようになり同社のビジネス規模は、飛躍的に大きくなる。