日本の高度医療海を渡る(中)~アジアトップ水準の評価に向けて
2013.11.28
編集部
医療機関、医療機器、医療サービス、IT、建設事業者などがコンソーシアム(共同体)を組んで、医療の国際展開プロジェクト3件が具現化したのは、政府が新成長戦略や日本再生戦略に「我が国の優れた医療サービス・技術を海外に展開する拠点整備等を図り、2020年には日本の高度医療および検診に対するアジアトップ水準の評価・地位の獲得を目指す」との基本戦略を策定し、政府が主導して取り組んできたことが大きい。
この方針に基づき経産省は、2008年度から「医療機器・サービス国際化推進事業」を打ち出し、医療途上国における日本式医療拠点の設置と事業化のための海外調査事業(海外の患者を国内医療機関に受け入れるインバウンド含む)を実施。医療の国際展開に前向きな国内医療機関などを公募で選定し、海外での調査事業(委託費交付)を官民一体で推進してきた。
経産省は、平成25年度予算に海外調査事業費として10億円を計上し、公募採択プロジェクト案件29件のアウトバンド事業について継続して取り組む。(表に19件の公募採択案件を示す)
平成25年度29件の調査事業として採択されたプロジェクトの中で、対象国として最も多いのが中国。呼吸リハビリテ―ションシステムの技術移転活用実証調査(コンソーシアム代表帝人ファーマ)や中国・タイにおける再生医療実用化プロジェクト(同ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)など7件にのぼる。
この中で、国際医療福祉大三田病院と中国・北京のリハビリテ―ション研究センター間を遠隔装置で結び画像の転送・診断を支援するプロジェクトの進展が期待される。機器の運用実験として東芝メディカルが遠隔画像診断システム、浜松ホトニクスが病理標本画像のデジタル機器と試薬の提供などを行う方針。
インドでは「日本式がん総合診断・治療センター」(同日立)や「簡易型医療機器普及促進」(同タニタ)など2件のプロジェクトが公募・採択されている。
アラブ首長国連邦では「日本式がん総合診断・治療センター構想」(同医療法人いつき会)と「ドバイのがん診断・機器調査」(同医療法人創友会)の2件のプロジェクトがある。
ロシアでは、北斗のプロジェクト具現化に続いて社団法人メディカルエクセレンスジャパン(MEJ)が事業主体となってロシア・モスクワに開設する「日ロ先端医療センター」(仮称)のプロジェクトに期待が高まる。同プロジェクトは、がんを撲滅する陽子線装置導入による治療が主軸。陽子線治療が軌道に乗った段階で日本式医療サービスを順次、導入する。現在、プロジェクトを組成中。また、カザフスタンでMEJが事業主体となって進める「高度がん診断センター」もプロジェクト組成の準備に入っている。
トルコは、日本のコンソーシアム(同アイテック)と組んで、27の国立病院を民間活用の事業化手法「PPP手法」で建設する。25年の運営期間後に譲渡するする「BOT方式」を採り入れて事業を行う。現在、デベロッパーや医療機器、商社など日本側の共同体組成に向けて準備中。