美容各社が取り組む「ダイバーシティ経営」(上)

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2013.12.19

編集部

美容業界で女性や外国人など多様な人材を活用して経営の効果化に繋げる「ダイバーシティ経営」の実践や、ダイバーシティ経営の効果を上げるために働く環境を整備して仕事と生活の調和を図るワークライフバランス(WLB)に取り組む動きが活発化してきた。花王と資生堂は、経産省推進のダイバーシティ顕彰制度「ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれた。また、化粧品事業を行なう味の元や美容業大手のアルテサロンホールディングス(HD)は、経団連が行った人事・労務に関するトップマネジメント調査でWLBの取り組み実態を明らかにするなど意欲的な取り組みが見られる。

ダイバーシティは、事業のグローバル化、国際化の進展に伴い女性や外国人などの人材を活用して経営効果に繋げる経営戦略上の人材構造改革。経産省は、ダイバーシティ経営の普及・啓蒙を図るため、2012年度から製品やサービスの新規開発や顧客満足度の向上、社員のモチベーション向上、職場環境の改善などに取り組み、著しい効果を上げた企業を対象に顕彰する「ダイバーシティ経営企業100選」をスタート。同顕彰制度をスタートした2012年度顕彰企業として花王、資生堂を含む43社を選出した。経産省は、2014年度までの3年間に100社を顕彰し、経済の活力に繋げる。

ダイバーシティ経営企業100選に選ばれた花王のダイバーシティ経営の取り組み実態は、1990 年に女性能力開発担当人事部を置き、80 年代後半から90 年代に仕事と育児・介護との両立支援制度を整備した。2000 年には、男女共に持てる力を十分に発揮できる環境づくりを目的とした推進委員会を設置した。

その後、2010 年には、「花王ウェイ」(花王の経営理念)の改定に伴い、ダイバーシティが事業の発展の原動力となることを明記。 2006 年からは、男性社員の育児参加促進活動を開始するとともに、女性社員の配偶者も含めて「育児は家族で協力しあうもの」という意識啓発に取り組んだ。 その結果、性別によらず意欲ある人材が活躍できる環境を実現。女性管理職比率は、2006 年度の3.7%から2012 年度に7.9%まで伸長した。特に、家庭用製品・化粧品の企画分野では、社員数がほぼ男女同数、女性管理職比率は20%を超えた。また、男性の育休取得率は、約40%に上っている。

さらに、事業のグローバル展開を支える人材育成のため、マネジメント研修のグローバル展開、公正な人事制度構築などに取り組んだ。こうした 30 年以上にわたる取り組みの結果、現在では、性別、国籍、人種等を問わず多様な人材が能力を発揮しながら働き続ける組織風土が形成され、化粧品事業やヘルスケア事業への新規参入を果たすなど消費者視点に立脚したイノベーションを生み続けられる組織として業績を拡大している。

資生堂のダイバーシティ経営は、経営方針として2005 年から「男女共同参画行動計画」を策定。2010 年からの第3 次では「女性リーダ―の任用・育成強化」「働き方の見直し」を重点課題とし、執行役員を部会長・副部会長とする組織体「男女共同参画プロジェクト」を設置してアクションプランに取り組んだ。
取り組みの内容は、「キャリアサポートフォーラム」(社外や女性役員による講演、ラウンドテーブルなどのプログラムを実施)や「キャリナビランチ」(社内外の女性ロールモデルの講演を聞くランチ会)など女性社員のキャリアに対する意識向上に加えて、事業所内保育所「カンガルーム」の設置・運営や「イクメンランチ」(育休取得経験のある男性社員とその上司のインタビュー、意見交換会)で男性の育児参加への意識啓発を実施。2005 年に立ち上げた「メガブランド戦略」では、低迷していたシャンプー・リンス市場でナンバーワンを奪回するため、部門を横断したプロジェクト体制を組み、従来の男性による意思決定では成し得なかった商品開発を追求するため、社内でもトップクラスの女性マーケッターを中心に意思決定権を持たせた。

一方、グローバル市場への展開に向けて2008 年に「グローバル人事ポリシー」を作成、日本と現地の連携を深める人事交流や現地子会社間での人事異動を含めた人材連携など海外現地法人社員に対する人材育成の本格的な取り組みを実施。また2012 年度は、現地法人外国人約50 名に対し、グローバルリーダー育成プログラムを実施した。

こうした アクションプランに基づく支援施策や女性のキャリアアップに関する取り組みによって本社内での商品開発や試作など意思決定を行う会議の場に女性が増加。また、プロジェクト体制のもとで洗い上がりの手触り感を重視し、洗練されたパッケージを採用するなど従来にない視点での商品開発を行なった結果、シャンプー・リンス市場で発売直後にシェア1位を獲得するなど女性をはじめとした多様な人材の視点・発想を活かした商品開発等によって業績拡大などの成果に繋がっている。

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