「我が社の生薬配合化粧品ビジネス」【8】ハーバー研究所、ビタミンC誘導体で乳化を大量生産実現(下)
2015.06.12
編集部
ハーバー研究所は、生薬配合の育毛剤開発を促進する中で、ビタミンC誘導体(ビタミンCを肌に浸透しやすく加工したもの)の研究開発に力を入れて取り組んでいる。ここへきてビタミンCに2分子のグリセリン(アルコールの1種)を付加した安定性の高い水溶性ビタミンC誘導体「グリセリルアスコルビン酸」に飽和脂肪酸の「ミリスチン酸」を結合させた非イオンの「ノニオンタイプ」の新規両親媒性ビタミンC誘導体(写真)を開発。同時に、新規に開発したビタミンC誘導体の「ミリスチル3-グリセリルアスコルビン酸」(MGA)を用いた特殊乳化法により、石油系の乳化剤を使用せずに液状油を50倍以上、大量乳化することを実現した。
MGAの特徴は①ハイドロキノンに匹敵する強い美白作用②ノニオンタイプであるため、製剤種、原料との相性が良くどのようなものにも容易に配合できる③ビタミンCの反応部位をグリセリンとミリスチン酸で安定化しているため、経時変化が起こりにくい④ノニオン両親媒性構造であるため、弱い界面活性効果がある⑤ミリスチン酸が結合している両親媒性物質であることから経皮吸収性が高く少ない配合量で効果が期待できるなど。
同社では、さらにMGAの特徴の1つである弱い界面活性効果を利用して新たな乳化技術「ビタミンC乳化法」を開発した。
ビタミンC乳化法は、同社が開発した新しい乳化剤フリーの乳化方法。MGAを乳化剤として応用することにより、ビタミンC誘導体で大量の油脂を乳化することを可能とした。
ビタミンC乳化法の特徴は①べとつきがなく、深い浸透感や高い感触が得られオイルのヌルツキ、テカリ、熱感を最小限にできる②W乳化でありながら一切、乳化剤を含まない。塗布後には、オイルの性質が表に出ることで、撥水性が出るため効率よく水分蒸散保護が出来る③乳化粒子膜がビタミンC誘導体であるため誘導体の特徴である肌の明るさが回復する④ビタミンC乳化膜から内層(液状油)が放出され、角質層の奥の方まで浸透、肌を保護する⑤ビタミンCに対して50倍以上の液状油を乳化できる。
同社では「ビタミンC誘導体が乳化膜という世界初の製剤が実現できる技術開発にメドをつけた。ビタミンC特有の経時変化がなく安定的に製剤を作ることができる。ビタミンC誘導体で乳化を行う技術を確立し、技術の防衛を図ることを狙いに乳化化粧料及び製造方法として特許を出願した」という。現在、特許は公開中。
同社は、このビタミンC誘導体で乳化し、甘草由来の抗炎症成分を配合したミルク状スクワランを商品化し、今年1月に数量限定で販売した。
ともあれ、同社が開発したビタミンC誘導体で乳化を行う独自の新乳化法は、国内外でも稀有なケースで、知的所有権の確立と合わせて技術の波及が注目される。