【連載】幹細胞化粧品開発元年【7】花王、皮膚科学と健康科学を融合した生命美容科学のステージ強化(上)
2015.10.5
編集部
花王株式会社(東京都中央区)は、これまで培ってきた長年の皮膚科学研究に健康科学研究の考え方を融合し、「皮膚も身体の一部」という新たな視点を加えて、ヒトの健康的な美しさをさらに高いレベルで実現する生命美容科学のステージ強化を打ち出した。
同社の研究開発費用は年間売上高の約4%、500億円強にのぼる。その約半分は皮膚、毛髪、健康代謝等の人に関わる基礎研究、それから泡、水、界面活性、環境等のモノに関わる基礎研究に費やしている。
美の領域については、同社が30年以上にわたって培ってきた皮膚科学研究にヘルスケアをベースとした健康科学を取り入れることで、新たなサイエンス「生命美容科学」という領域を生み出し、ビジネス拡大を図る。
生命美容科学の具体的研究としてヒトが本来持っている機能・美しさを引き出し、個々人に合わせた最適な健康・美を提案するための本質を追究する。
研究領域は「皮膚」だけでなくその土台となる「血液循環・神経系」「炎症・免疫系」「内分泌・代謝系」などの身体機能にも着目。なかでも、血液をすみずみまで行き渡らせることで、自らの健康状態を維持する役割を担う「血管力」についての研究を深耕する。
同社は、外部環境の変化に応じて血流を調節する力、皮膚血流調節能を意味する血管力の研究知見として今年7月にヘルスビューティ研究所での研究成果を明らかにした。
血管力研究では皮膚性状の季節変化と血管力との関連を調べるため、女性37名(30代18名、50代19名)に対して同一個人について夏季、冬季の各1回ずつ皮膚性状(肌荒れ=頬、前腕、すね)を測定した。夏季の皮膚温回復率の計測から、血管力の高い人(N=14)、低い人(N=23)を2群にわけ、皮膚性状の季節変化を比較検討した。
その結果、夏季の血管力が高い人では、冬季において顔、体の両方で鱗屑(りんせつ=角層が剥がれ落ちること) ができにくかった。これに対し、血管力が低い人では、冬季に鱗屑が悪化しやすいことがわかった。
さらに、血管力の高い人(N=14)、低い人(N=23)の2群に対してストレス度および体調悩み意識についても比較検討した結果、血管力が高い人は、ストレス度および体調悩み(冷え性、血行、睡眠の質、疲れやすさなど)の意識が低いことが判明した(データ図)。
こうした皮膚科学の深化にヘルスケアをベースとした健康科学を取り入れ、細胞、遺伝子技術等を駆使するなどして新たな健康と美の価値の本質を追究し、提供していく考え。