【連載】エステ・理美容業界シェア争い激化(6)エステ・理美容業界シェア争い激化

2013.05.15

特集

編集部

国内エステ・理美容業界、旧態派・地球派の2極分化進展

これまで大手に独占されてきたエステ・理美容業界に化粧品メーカーや調剤薬局、スポーツ、リラクゼーション施設事業者などの異業種やベンチャー企業などが参入し、多店舗展開によるマスセールスに乗り出す動きが顕著になっている。いずれも、本業の事業に付加価値を付けて収益の向上に繋げるのが狙い。しかし、国内エステ・理美容市場のパイが小さくなり多店舗展開によるマスセールスの時代は終わった。これからは、質的サービスへの転換、海外市場への進出など新たなイノベーション(変革)に果敢に挑戦するグローバル戦略の対応に迫られるのは、避けられない情勢だ。

経産省が行ったエステ業界の2010年度実態調査では、店舗数8842店、市場規模3536億円にのぼる。美意識や健康への関心などから4000億円市場の期待が高まったが消費高齢化の進展、需要不振、大震災の影響などで市場規模は縮小している。

このためエステ各社は、国内店舗の統廃合や経営の効率化を図った新業態店の開発、自力で商品を開発する技術力、サービス力が一段と求められている。また、地球派を標榜するエステ・理美容サロンの中には、国内のパイを巡るシェア争いから転換し、新たな市場を求めて海外での事業展開に乗り出す動きが顕著。

海外展開に当たっては、政府の成長戦略ク―ルジャパンに沿って化粧品やエステ・理美容業界、ファッション業界、ヘルスケア業界など美容に関連する業界団体が合従連衡を組んで、政府と一体となって世界各地でイベントを開催し、日本の美容を売り込んで行くことも重要だ。

これまで培ってきた日本の伝統文化に根差した顧客満足度を実現するエステ術やカット技術、ヘアデザイン技術、顧客・接客技術などを包含したサービスの提供、物販の販促を海外に売り込む新たなグローバル戦略を業界が一丸となって取り組む新たな視点が求められる。国際競争力の中でグローバル戦略に打って出る地球派に対し国内市場にしがみつく旧態派の2極分化が今後、さらに進むのは必至だ。

化粧品市場(1兆4000億円)の伸び悩みでエステ市場に参入した化粧品各社の出店攻勢で旧態派のエステサロン専用各社とのシェア争いは今後、さらに激化する見通し。
また、旧態派のエステ・理美容サロン専業の中には、年間売り上げが100億円を超す企業が見られる。中には、200億円を突破した事業者も数社にのぼるなど企業間格差が鮮明になっている。しかし、事業規模からみて株式公開の実力を備えているにも関わらず未上場の状態にあるのは、極めて不自然でありほとんどが個人経営から転換できていない。そこに旧態派と位置づけられる理由がある。

株式公開の是非は別にしても経営の実態、情報の開示を積極的に行う姿勢が求められる。それが結果として年中行事のように起きるエステ業界の景品表示法、特定商取引法の違反やエステの契約取引、施術などの苦情、トラブルの解消に繋がり消費者、社会から信用される企業になり得る。
ここへきてエステサロンの中には、遺伝子検査を受託してカウンセリングを行い、痩身美容を行うなどの新手のサービスに乗り出す動きが見られる。これとて消費者の安心安全や法令順守は不十分だ。

一方、理美容業界の市場規模は、2011年度で1兆1000億円、事業者数11万6000軒と推計されている。阪南理美容やアルテサロン、タカラベルモンテなどの一部企業が市場のシェアを独占。総事業者数の9割が個人経営で占める。料金の低価格化が進行する一方で、多店舗展開企業の中にはエステ、ネイル業態を採り入れたサービスに乗り出す動きも見られ2極化がさらに進展する。こうした流れの中で、個人経営の理美容サロンは、淘汰されるのは避けられない状況で、生き残るための新たな活性化が業界挙げて急務と言える。

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