化粧品原料メーカーがインバウンド背景に活況、一部で増産の計画も
2018.06.4
編集部
化粧品原料メーカーの業績が好調だ。根強いインバウンド需要が背景にあり、一部では、増産を計画しているメーカーもあり、しばら活況が続きそうなトレンドにある。
各社の直近の業績を見ると、日本精化株式会社(大阪府大阪市)は、化粧用機能原料などを含む工業用製品事業の売上高(2018年3月期通期)が前期比12.1%増の199億3000万円となった。リン脂質、ステロールからなる天然由来の液晶形成乳化剤『Phytocompo』および『Composite』シリーズは優れたスキンケア効果を発揮する。毛髪必須脂質である18-MEAやコレステロールをナノカプセル化した高機能ダメージヘア向け原料『NanoRepair』シリーズなどヘアケア原料も展開している。
中期経営計画(2018年4月~2023年3月)においては、香粧品分野の事業戦略としては、「生理活性物質」「機能性油剤」「ナノ素材」といった化粧用機能原料を供給するグローバルパートナーを目指した認知度向上と市場への浸透を盛り込んでいる。
太陽化学株式会社(三重県四日市市)は、化粧品やトイレタリー業界向け乳化剤などを含むインターフェイスソリューション事業の売上高(2018年3月期通期)が前期比3.3%増の87億3200万円。化粧品やトイレタリー向けとしては化粧水用およびクリーム・乳液用乳化剤などをラインナップしている。
日清オイリオグループ株式会社(東京都中央区)は、化粧品・トイレタリーなどが属するファインケミカル事業の売上高(2018年3月期通期)が前期比7.1%増の180億7600万円となった。化粧品原料は、韓国、欧州向けの輸出販売が前期を下回ったが、国内における主要取引先への販売が好調に推移。同社は横浜磯子事業場(神奈川県横浜市)内の化成品工場において、化粧品用エステル(化粧品原料)およびMCT(中鎖脂肪酸油)の生産能力を現行の生産能力の約1.5倍にすることを決定した。投資額は約52億円に上る。
ミヨシ油脂株式会社(東京都葛飾区)の2017年12月期通期業績を見ると、界面活性剤やトイレタリーなどを含む油化事業の売上高は前期比10.4%増の140億3400万円。香粧品分野の化粧品用クレンジング基剤が、展示会への出展などの積極的な営業活動に注力した結果、販売が伸長した。同社では、トイレタリー、コスメティック商品原料向けに両性界面活性剤『アンホレックス』、アルカノールアマイドタイプの非イオン系活性剤『アミコール』、エステルタイプの非イオン系界面活性剤『Mファインオイル』などを取り扱っている。
東洋精糖株式会社(東京都中央区)の機能素材事業の売上高(2018年3月期通期)は前期比12.7%増の11億3500万円。飲料・健康食品向けおよび国内外ともに化粧品原料が引き続き堅調に推移した。独自の酵素処理技術によりルチンの水溶性を大幅に高めた「αGルチンPS-C」、水溶性多機能保湿剤の「コスアルテ-2G」、乾燥したバオバブの種子をコールドプレスして得られたオイル「バオバブ・サリチェ」などを展開している。
日油株式会社(東京都渋谷区)の機能化学品事業の売上高(2018年3月期通期)は前期比8.9%増の1206億3600万円。このうち化粧品原料については「インバウンド需要によりかなり好調に推移している。2018年度も国内を中心に堅調」(取締役兼執行役員の坂橋秀明氏)との見通しだ。
東邦化学工業株式会社(東京都中央区)の界面活性剤の売上高(2018年3月期通期)は前期比12.6%増の230億2000万円となった。今後も、界面活性剤やアクリレート製品などを中心に今後も着実な増加が見込まれ、このまま推移すると2019年末には、既存設備がフル稼働の見通しで、生産能力が不足することが予想される。そのため、中国・上海にある東邦化学(上海)有限公司の生産設備などを約30億円を投じて増設する見通し。
堺化学工業株式会社(大阪府堺市)は、化粧品材料について「特殊形状酸化亜鉛や水分散体などオンリーワン製品の開発により売上の拡大を図る」(取締役社長の矢部正昭氏)考えで、2019年には2015年比1.9培の売上を目指す考えを示している。2018年3月期通期の酸化チタンなどを含む化学事業の売上高は前期比6.8%増の776億2800万円となった。
互応化学工業株式会社(京都府宇治市)の反応系製品部門の売上高(2018年3月期通期)は前期比2.3%増の64億1500万円。このうち、化粧品業界向けについては、国内市場でヘアスタイリング剤の新規獲得があり、海外でも大手化粧品メーカーの売上拡大に連れて販売量を伸ばすことができた。同社の化粧品用樹脂・油剤は、40年以上前から化粧品に配合され、公定書(医薬部外品原料規格)にも収載されている。ヘアスプレー、ヘアムースなどに使用される樹脂、シャンプー・コンディショナーなどに添加し特徴を付与する樹脂、ヘアリキッド・トリートメントへ配合される油剤など、毛髪化粧品用原料の開発をメインとして、様々な化粧料への配合を目的とした新規原料の開発を行っている。