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オリエンタルエステの先駆者が語る!西坂才子氏が描く美容業界の未来

表面的な美から内側の健康へ—オリエンタルエステ誕生の軌跡

花上:今回は、エステティック業界のパイオニアの一人である西坂さんに、これまでの歩みと会社経営への考え方についてお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

西坂:こちらこそよろしくお願いいたします。

花上:貴社は“オリエンタルエステ”という当時は画期的なコンセプトで、エステティック業界を牽引していらっしゃいました。西坂さんはどのような経緯でエステティック業界に参入されたのでしょうか。

西坂:私は33年前、1980年に独立し、スリムビューティハウスの前身である鍼灸治療院「早稲田美容研究所」を開設しました。もともと、手に職をつけて経済的に自立した女性になりたいと考えていたのですが、四年制大学を卒業した当時は経済不況で、女性の就職も難しかった。そのような時に鍼灸治療と出会い、新鮮な驚きを感じたのです。
そして、鍼灸をはじめとした東洋の知恵は、身体の治療だけでなく、美容にも効果的ではないかと考えました。当時のエステティック業は成長産業でもあり、将来性があると感じていた。
また私にとっても、女性ならではの感性を活かして一生続けられる仕事だと思い、エステティックを始めようと決意したのです。

花上:確かに約30年前はエステティックの第一次ブームで、起業する方も多かったですね。そのなかで、西坂さんはどのように多くの女性の心を掴むことができたのでしょうか。

西坂:当時は様々なエステティックがありましたが、表面的な美を追求するものが多かったように思います。しかし私は、内臓機能を活発にし、身体の内側を健康にすることで美しくなろうという東洋美容の考え方を応用し、「オリエンタルエステ」というコンセプトを考案しました。エステティックサロンでは鍼灸はできませんが、カッピングやカップドレナージュなど、東洋美容ならではの技術を提供できます。当時としては新しい先駆的な考えであり、女性への訴求力は非常に高かったと自負しています。
そして、83年にはオリエンタル・エステティックサロン「スリムビューティハウス」を吉祥寺店にオープンしました。4年後には株式会社スリムビューティハウスを設立し代表取締役に就任。その後は非常に順調に店舗を展開することができ、160店舗ほどまで一気に事業を拡大していきました。

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花上:西坂さんは、創業当時から戦略的な経営目線で会社を興されていったのですね。

西坂:しかし、躓きもありました。あまりにも事業拡大が早かったため、スタッフ教育が追いつかず、90年代後半には事業規模の縮小を迫られました。当時ではすでに、エステティックに関する相談は国民生活センターや消費生活センターにおいて多数を占めており、より信頼性の高い店舗づくりが求められていたのです。これが最初の躓きです。
さらにその後、様々な業種で長期にわたる前売金制度の問題点が表面化したこともあり、数年間は財務の健全化に注力しました。それが奏功し安定を取り戻したので、また新たな戦略を立てているところです。

花上:健全化への取組みは、エステティック業界全体にも大きく影響しますね。

西坂:これまで様々なことを経験してきましたので、こうありたいという会社の姿や、やりたいことというのがはっきりと見えてきたのです。健全な経営は、法令を遵守した営業体制につながります。またお客様が安心して通え、満足度も高いサロンづくりにも集中して力を入れることができます。安全で信頼性の高い企業でありたいと考えるようになりました。

社会貢献と顧客信頼の両立—震災支援プロジェクトが生んだ紺綬褒章

花上:ところで、西坂さんは福島のご出身ですが、東日本大震災ではご心痛が大きかったとお察しします。

西坂:震災後は私自身も福島の故郷に足を運び、被害の状況を目の当たりにしました。復興のためにいち早くアクションを起こしたかったのですが、震災直後は、危機感や不安感から東日本において買い控え、外出控えが目立ちました。エステティックサロンは不要・不急の事業でもありますので、震災直後にはお客様にどのような施術をお勧めするべきなのか、スタッフにも戸惑いがあったようです。
そこで、“ あなたのBEAUTYをPOWERに” をスローガンとした「SlimBeauty プロジェクト」を立ち上げました。売上の一部を義援金および日本赤十字社の活動協力として寄付するもので、目標金額は1億円。本当に達成できるのか不安な時もありましたが、このプロジェクトにより現場スタッフのモチベーションが非常に高まったようです。営業としても良い結果が出せ、12年9月に目標金額を達成することができました。さらに社員一丸となって取り組んだ社会貢献活動なども認められ、国からは紺綬褒章を、日本赤十字社からは金色有効章を授与されました。社会に必要とされる企業でありたいという思いが実を結んだと考えています。

花上:たいへん意義のあるプロジェクトです。“消費を通して日本経済を支えよう”という消費者の気持ちも後押しとなったのでしょうね。社会に必要とされる企業であるために、他にどのような取組みをされていらっしゃるのでしょうか。

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西坂:社員教育や採用という面でも意識をしています。現在は就職氷河期で、大学生の企業内定率が非常に低い。こうした社会情勢を意識し、今年の採用では四年制大学の学生を5割程度採用しています。“人財”という言葉がありますが、会社にとって社員は本当に財産。以前は社員間で競争をさせるようなこともありましたが、現在は大事に育てていくのを基本としています。なぜなら、接客業に携わる人は他者から大事にされていないと、よい仕事ができないと思うからです。また、会社の売上状況など、経営内容は社員にすべて公開しています。情報を開示して社員に考えさせることで、考える力をつけるよう、促しています。

花上:学会での発表も積極的に行っていらっしゃいます。

西坂:91年から継続的に取組んでおり、最近では、東京大学食の安全研究センター(天野暁特任教授)との共同研究において、オリエンタルエステがもたらすアンチエイジングについての研究成果を実証することができました。公に発表することで、施術の信頼性も高くなります。何よりも、エステティシャンが安心感とプライドをもって、自信のあるものをお客様におすすめできるという大きなメリットがあると感じています。

人口減少時代を見据えた海外戦略—アジア進出で拓く次の10年

花上:現在の日本のエステティック市場をどうご覧になっていらっしゃいますか。

西坂:美容に対する需要はもちろん大きいと思います。しかし、人口減少時代にあっては、どうしても国内のマーケットはシュリンクしていくでしょう。数年前からアジアへの進出を考えており、11年12月には、中国・蘇州に海外第一号店をオープンすることができました。
東南アジアでも美容に対する意識は高まっています。マレーシアでは美白ブームが起こっているようですね。5年後、10年後はより経済的に豊かになり、痩身に対するニーズも高まってくるでしょう。チャンスは様々なところにあると感じています。数年先を見据え、じっくりと戦略を練っているところです。

花上:グローバルな視点に立って経営判断をされていらっしゃるのですね。

SLIM_Nishizaka_1788西坂:経営者としても、また私個人としても、グローバルな視野で物事を考えるよう心がけています。そのせいか、他国の方と話しても違和感がありません。何よりも、新しいことに挑戦するのが楽しいですし、とてもワクワクしますね。オリエンタルエステを、海外のたくさんの方に受けていただきたいです。

花上:日本の高いエステティックの技術、ホスピタリティをぜひ世界に広めていただきたいですね。本日はありがとうございました。

西坂才子氏はほかにも、同社が運営するエステティックスクール「スリムビューティハウスアカデミー」を被災者の方には無料で通信教育を提供するなどの活動も行っている。健全で信頼性の高い企業、社会貢献性の高い事業は、社員やスタッフにとっても、仕事に誇りもって働くことのできる環境だ。結果として、美容に携わる人の意識を高めることができるのではないだろうか。

=敬称略= (撮影:延藤学)

西坂才子(にしざか・さいこ)/青山学院大学卒業。鍼灸治療院を開設後、1987年株式会社スリムビューティハウスを設立。東洋医学をベースとした独自の健康美容法を開発し、世界各国の学会で発表を重ねている。日本のウェルネスサービスとして海外から注目を集め、米国TIME誌をはじめとする雑誌にも紹介された。

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