株式会社アルテ サロン ホールディングス 代表取締役会長 C.E.O吉原直樹さん

インタビュー

監修:美容経済新聞

花上:吉原さんはご自身の著書『「世界で戦える日本」をつくる新発想』(幻冬舎)の中で、美容師をはじめとする日本の職人たちが秘める「高い技術力」とこまやかな「おもてなし精神」は、世界に対して誇れる強みである、と説いていらっしゃいますね。
本の中では上記の2つの能力を「人財力」と称されていますが、吉原さんは「人財力」に対して具体的にどのような可能性を感じていらっしゃいますか?

吉原:日本は長い間、“ものづくり”で栄えてきた歴史がありますね。
小さいものは半導体から、自動車や新幹線、原子力発電所に至るまで、その技術の高さを世界に示してきました。しかし、今や世界中で技術が共有され、同じモノが作れるようになってきています。
ともすると、安く人を雇える中国やベトナムに工場を造ろう、というのも自然な流れ。結局人件費の問題に帰着してしまうのです。

そうした中で、他国に簡単に真似のできない日本の独自性は何か?を考えると、それは日本の“匠の精神”が育んだ「人財力」だと考えます。
見た目が同じ完成品でも、日本の職人たちが作ったモノには、日本という固有の風土が育んだおもてなし精神、そして丁寧な仕事ぶりがたっぷりと詰め込まれています。
「一流の職人を尊敬してやまない心」や「腕を上げることに何よりも情熱を燃やすポテンシャルの高さ」、「お客様をもっと喜ばせたい、というサービス精神」、「いらっしゃいませ、と笑顔で迎える接客」などの人財力が注ぎ込まれ、品質にプラスアルファの付加価値を与えているのです。

私が生きてきた美容業界もまさに人財力で成長してきた世界です。
実際、日本の美容サービスは世界でも有数の高い評価を得ていますし、今後はさらに世界へと飛躍する大きな潜在能力を持っていると思います。
これからは技術力だけでなく「人財力」を世界にアピールしていくことで日本の競争力をより高めていくことができるのではないかと考えています。

花上:「人財力」を高め、維持するためにはやはり教育が大事になってきますよね?

吉原:おっしゃる通りです。
私は、夢の原点が教育だったこともあり、経営の本質は教育であると思っています。
実際にこれまでたくさんの美容室を見てきましたが、いくら一流のお店であっても、教育を怠れば必ずレベルは落ちます。

反対に、着実にスタッフを教育していれば必ずレベルの高い美容室へと変化します。
美容室のみならず、エステやネイル,リラクゼーションなども、人がいなければ成り立たない世界ですよね。
オートシャンプーは機械として便利だけれど、かゆいところまでは判断してくれない。いくらテクノロジーが進歩しても人の手にはかなわないということです。

とにかく、美容業界では人財力で勝負するしかないんですね。
だからこそ、教育システムをしっかりと確立してスタッフ一人ひとりの意識を高めることが大事。
ゆとり教育の時代になって「ナンバーワンにならなくていい。オンリーワンになればいい」という考え方が広まっていますが、私はプロフェッショナルたる人、ナンバーワンを目指さなければモチベーションが上がらないと思っています。
現状に甘んじることなく、つねにレベルアップを目指して、どんどん進化していって欲しいですね。

花上:ありがとうございます。
今回のインタビューを通じて吉原さんのアグレッシブな魅力をひしひしと感じ、美容業界に革新をもたらしてこられた理由がわかったような気がしました。
これからのますますのご活躍を、お祈りしています。

前へ
吉原直樹 Naoki Yoshihara

Profile
1956年神奈川県生まれ。
78年埼玉大学教育学部卒業、同年4月タカラベルモント株式会社に入社。

1981年美容室チェーンに転職し、店舗開発、店舗運営を手がける。
28歳で自らも美容師免許を取得するため、美容学校に入学。31歳で美容師免許を取得。
1986年に個人事業主として横浜市に美容室を開業、88年に有限会社アルテを設立。
東京、神奈川を中心に「Ash」ブランドの「のれん分けフランチャイズ方式」という美容師の独立支援システムで業績を伸ばす。

2004年8月にJASDAQ市場に上場。
現在、株式会社アルテ サロン ホールディングス代表取締役会長としてグループ全体の指揮をとる。
著書:『「世界で戦える日本」をつくる新発想』(幻冬舎)

#

↑