株式会社スリムビューティハウス 代表取締役CEO西坂才子さん
監修:美容経済新聞
福島の復興とともに学会発表にも力を入れる
花上:ところで、西坂さんは福島のご出身ですが、東日本大震災ではご心痛が大きかったとお察しします。
西坂:震災後は私自身も福島の故郷に足を運び、被害の状況を目の当たりにしました。復興のためにいち早くアクションを起こしたかったのですが、震災直後は、危機感や不安感から東日本において買い控え、外出控えが目立ちました。エステティックサロンは不要・不急の事業でもありますので、震災直後にはお客様にどのような施術をお勧めするべきなのか、スタッフにも戸惑いがあったようです。
そこで、“ あなたのBEAUTYをPOWERに” をスローガンとした「SlimBeauty プロジェクト」を立ち上げました。売上の一部を義援金および日本赤十字社の活動協力として寄付するもので、目標金額は1億円。本当に達成できるのか不安な時もありましたが、このプロジェクトにより現場スタッフのモチベーションが非常に高まったようです。営業としても良い結果が出せ、12年9月に目標金額を達成することができました。さらに社員一丸となって取り組んだ社会貢献活動なども認められ、国からは紺綬褒章を、日本赤十字社からは金色有効章を授与されました。社会に必要とされる企業でありたいという思いが実を結んだと考えています。
花上:たいへん意義のあるプロジェクトです。“消費を通して日本経済を支えよう”という消費者の気持ちも後押しとなったのでしょうね。社会に必要とされる企業であるために、他にどのような取組みをされていらっしゃるのでしょうか。
西坂:社員教育や採用という面でも意識をしています。現在は就職氷河期で、大学生の企業内定率が非常に低い。こうした社会情勢を意識し、今年の採用では四年制大学の学生を5割程度採用しています。“人財”という言葉がありますが、会社にとって社員は本当に財産。以前は社員間で競争をさせるようなこともありましたが、現在は大事に育てていくのを基本としています。なぜなら、接客業に携わる人は他者から大事にされていないと、よい仕事ができないと思うからです。また、会社の売上状況など、経営内容は社員にすべて公開しています。情報を開示して社員に考えさせることで、考える力をつけるよう、促しています。
花上:学会での発表も積極的に行っていらっしゃいます。
西坂:91年から継続的に取組んでおり、最近では、東京大学食の安全研究センター(天野暁特任教授)との共同研究において、オリエンタルエステがもたらすアンチエイジングについての研究成果を実証することができました。公に発表することで、施術の信頼性も高くなります。何よりも、エステティシャンが安心感とプライドをもって、自信のあるものをお客様におすすめできるという大きなメリットがあると感じています。
数年先を見据え海外にも積極的に出店
花上:現在の日本のエステティック市場をどうご覧になっていらっしゃいますか。
西坂:美容に対する需要はもちろん大きいと思います。しかし、人口減少時代にあっては、どうしても国内のマーケットはシュリンクしていくでしょう。数年前からアジアへの進出を考えており、11年12月には、中国・蘇州に海外第一号店をオープンすることができました。
東南アジアでも美容に対する意識は高まっています。マレーシアでは美白ブームが起こっているようですね。5年後、10年後はより経済的に豊かになり、痩身に対するニーズも高まってくるでしょう。チャンスは様々なところにあると感じています。数年先を見据え、じっくりと戦略を練っているところです。
花上:グローバルな視点に立って経営判断をされていらっしゃるのですね。
西坂:経営者としても、また私個人としても、グローバルな視野で物事を考えるよう心がけています。そのせいか、他国の方と話しても違和感がありません。何よりも、新しいことに挑戦するのが楽しいですし、とてもワクワクしますね。オリエンタルエステを、海外のたくさんの方に受けていただきたいです。
花上:日本の高いエステティックの技術、ホスピタリティをぜひ世界に広めていただきたいですね。本日はありがとうございました。
西坂才子氏はほかにも、同社が運営するエステティックスクール「スリムビューティハウスアカデミー」を被災者の方には無料で通信教育を提供するなどの活動も行っている。健全で信頼性の高い企業、社会貢献性の高い事業は、社員やスタッフにとっても、仕事に誇りもって働くことのできる環境だ。結果として、美容に携わる人の意識を高めることができるのではないだろうか。
=敬称略= (撮影:延藤学)
Profile
青山学院大学卒。
鍼灸専門学校を経て、鍼灸師の資格を取得。
1983年「武蔵野鍼灸センター」を開設した後、「スリムビューティハウス」の展開をはじめる。
日本美容福祉学会理事。
財団法人自由アジア協会理事。
財団法人日本エステティック研究財団会員。
日本エステティック協会会員。
有限責任中間法人日本全身美容協会会員。
日本美容皮膚科学会会員。