マンダム、体温調整を担うヒト汗腺収縮の可視化に成功

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2018.09.18

編集部

大阪大学大学院薬学研究科と株式会社マンダム(大阪府大阪市)との共同研究講座「先端化粧品科学共同研究講座」において、発汗制御につながる次世代の制汗剤創出に向けた基盤技術の研究開発に取り組んでいる同社は、同大薬学研究科、蛋白質研究所、医学系研究科と共同で、発汗時におけるヒト汗腺の収縮を可視化することに成功した。

汗腺は片方が閉じた1本のチューブでできている。チューブの開いた方は肌の表面(汗の出口)にあり、もう一方は肌の表面から内部に向かって数ミリ下まで伸び、その先でコイル状に折り畳まれている。この汗腺のコイル領域は、分泌部と一部の導管部で構成されていて、分泌部の一番外側に筋上皮細胞が取り囲んでいる。この筋上皮細胞が発汗時に収縮すると、分泌部でつくられた汗が導管部を通って肌の表面に放出されると考えられている。

近年、この発汗による生活者の悩み(多汗や汗臭)が、温暖化や社会環境の変化を背景に増えてきている。この悩みを解消するために、塩化アルミニウムなどの汗腺の出口にフタをする成分が既存の制汗剤には配合されている。しかし、たくさん汗をかくとフタが取れたり、しっかりフタをすると汗の中に含まれている物質が汗腺の中で炎症を起こしてしまう。

そこで同社は、汗腺の分泌部に直接作用して休眠させるような(汗をかかなくするような)制汗剤が開発できれば、既存の制汗剤では解決できなかった生活者の悩みを解消できると考えた。

発汗収縮を抑える制汗剤を開発するためには、まず、どのように汗腺が収縮しているのか、そのしくみを理解するための観察法が必要になる。そして、その観察法を応用して、収縮を抑える成分を見つけるための評価法が必要となる。

そこで、まず、体の中で起こっている汗腺の発汗収縮を生体外で再現することにした。そのために、実際に汗腺のコイル領域をヒトの皮膚組織(倫理審査承認済み)から取り出し、三次元ライブイメージングという手法を用いて、生体に近い状態での汗腺の発汗収縮の観察を試みた。

発汗収縮に適切な試薬やその濃度、収縮が観察できるイメージングの解像度や撮影スピードなど、発汗収縮の観察に必要なさまざまな条件を一から検討。その結果、発汗刺激によって、ヒト汗腺が非常にダイナミックに収縮する映像をとらえることができた。

さらにこの発汗収縮の映像を細かく解析していく中で、発汗収縮している汗腺の内部において、分泌部から順に汗腺のチューブ内のボリュームが汗が押し出されるように順番に大きくなる現象をとらえた。このボリュームの変化を特殊な画像解析ソフトを用いて数値として算出することで、発汗収縮を客観的に評価する方法も確立した。

この結果は、今回同社が確立した観察法が、実際に体の中で起こっている汗腺の発汗収縮を生体外で再現しており、さらには、この観察法によって得られたデータを解析することで、有効成分(汗腺に直接作用して発汗を抑える)の探索が可能であることも示している。

なお、今回の研究の一部は、日本学術振興会 科学研究費助成事業17K16337(ヒト汗腺の発汗収縮メカニズムの解明-可視化法の改良とそれを用いた動態解析-)の助成を受け実施された。

今回の研究成果は、ドイツで開催される「第30回国際化粧品技術者会(IFSCC)ミュンヘン大会」(9月18日~21日開催)において発表する予定だ。

参考リンク
株式会社マンダム

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